複数の電極がある場合の電場解析

概要:

電場解析で複数の電極を用意しそれぞれの電極間での容量を求める場合についてご紹介します。電極が複数ある場合はそれぞれの電極の境界条件名を別々にするだけで、それぞれの電極間の容量を計算することができます。例え同じ電位を与えた場合でも境界条件名が違う場合は違う電極として認識されます。例えば下図の例ではElectrode1, Electrode2の電位が同じ値1[V]に設定されていたとしても、境界条件名が違っているため、別の電極と認識され、Electrode1とElectrode2の間の容量値も出力されます。

model

それぞれの電極間の容量はマトリクス形式(表形式)でテーブルに出力されます。

table

電場解析では解析条件を選択する際に静解析(容量値)、静解析(抵抗値)、調和解析の3種類から解析内容を選択できますが、それぞれの解析内容に応じて出力される結果は以下のようになります。

  • 静解析(容量値) ⇒ 容量マトリクス
  • 静解析(抵抗値) ⇒ 抵抗マトリクス
  • 調和解析     ⇒ 容量/抵抗マトリクス

circuit

指と電極の間の容量計算

概要:

指と電極の間の容量値の計算を行います。指は導体と考えられますので、指の表面に電位境界(1[V])を設定し、電極についても同様に電位境界(0[V])を与えて解析を行います。指の形状や電極の形状は実際に合わせより複雑なモデルをご用意いただければさらに詳細な解析が可能ですが、今回は指も電極も単純な形状で解析を行っています。

 

model

解析結果:

解析結果の電位図(コンター図)、容量値は以下の図のようになります。容量値は「計算結果テーブル」を表示する事で取得する事ができます。

result

静電力により変形した形状を求める

概要:

今回は2本のアルミの棒に電圧をかけることで、片持ち梁がひきつけあう力を解析します。「電界解析」による静電力を使った「応力解析」が必要になるため、「電場解析」と「応力解析」を選び連成解析を行います。

解析モデルの設定:

モデル形状としては2つのアルミの棒を作図し、電気的な境界条件「電位」と機械的な境界条件「変位固定」の両方が必要になります。「変位固定」をしないと応力解析時に静電力により梁が自由に移動できることになるため、物体のどこかを「固定」しておくのは忘れがちですが重要な境界条件です。空気領域は自動で作成されるため作図不要です。アルミの棒の材料は材料データベースから選びます。

model

解析結果:

計算結果の静電力(節点力)の結果のベクトル図より、アルミの棒同士が引き合っているのが分かります。また応力解析で変位ベクトルと変形図を表示するとアルミ棒が引き合って変形していることも分かります。

result

平行平板キャパシタの容量の理論値についての考察

概要:

シミュレーションの結果が妥当なものかどうかについて、実験値と比較するという取り組みが一般的によく行われています。そもそも理論解が求まるような問題というのはあまり多くありません(そのためにFemtetのような数値解析が利用されます)が、Femtet自体を開発する段階では理論解と比較し解析結果が正しいかどうかを常に検証しています。ここでは簡単な平行平板キャパシタの容量についてFemtetの解析結果と理論解が一致するかどうかを確認検証してみます。

まずは理論解とFemtetの結果を比較:

平行平板キャパシタの容量の理論解はよく知られるように、真空の誘電率をε0、比誘電率をεr、電極面積をS、電極間隔をdとすると以下のように表せます。

C=ε0*εr*S/d

Femtetで境界条件1[V],0[V]を設定し、比誘電率εr=10、キャパシタサイズを10[mm] x 5[mm] x 3[mm]として解析を行います。ここで注意が必要なのは解析の利便性を考えモデルの外側に自動的に空気領域を自動作成する機能が働くのですがこの機能をOFFにしておく必要があります。こうする事でキャパシタの部分のみがメッシュ生成されるので理論解と全く同じ状況のモデルを作成する事ができます。

model1

Femtetで解析すると容量は、C=1.476[pF]という値が得られます。一方理論解を求めると、

C=8.854e-12*10*0.010*0.005/0.003 =1.476[pF]

となりこのモデルでのFemtetの解析結果と理論解は完全に一致します。

contour1

周囲に空気があると想定したモデル:

次にモデルとしては同じ形状ですが、[解析条件]->[メッシュの設定]タブで「空気領域を自動作成する」にチェックを入れて解析すると、モデルの周囲に空気領域が自動で生成された解析が行われる。

model_with_air

この場合のFemtetの解析結果はC=1.663[pF]となり、理論解の1.476[pF]より13%大きい値となりました。

contour_with_air

結果の考察:

周囲に空気がある場合にFemtetで解析した結果の容量は一見すると理論解からずれているように思えますが、このモデルでは理論解で考慮されていない、電極の縁端効果による容量も含んだ解析を行っていることになるため理論解よりも大きな容量値が得られたと解釈できます。またここでは比較していませんが、空気領域を自動生成したモデルでも、キャパシタ部分の比透磁率をεr=100,εr=1000と大きくしていくと、空気領域の縁端効果による容量の影響が相対的に小さくなっていくため理論解とFemtetの結果は近づいていきます。今回のように理論解をFemtetで解析しようとするとき理論解とまったく同じ条件で解析できているかは注意深く確認する必要があります。Femtetのような数値解析で解析できる範囲は理論解が求まるよりも広く、理論解が求まるような特別な条件でFemtetを使用して解析した場合数値誤差の影響は若干あるものの基本的にはほぼ同じ解が得られます。

コイルの浮遊容量計算

概要:

電場調和解析を利用してコイルの浮遊容量を計算します。Femtetヘルプに 静電場解析を使用した浮遊容量計算例があります(Femtetヘルプ:電場解析 例題18 参照)が、今回の例では静電場解析の結果と近い結果を得るため周波数は低い周波数(1kHz)に設定しています。

解析モデル:

コイルの入力面に1[V],出力面に0[V]の電位の境界条件を設定し、コイルの材質を与えます。この例では銅でできたコイルを想定しています。外部境界条件は「磁気壁」にします。周囲の空気領域は自動で作図されるため作図不要です。

 

model

計算結果:

調和電場解析の結果、コイルの浮遊容量とコイルの抵抗が得られます。静電場解析を使って浮遊容量を計算するときとの違いは以下の2点です。

  • 計算結果の電位分布・電界分布が表示できる
  • 容量値だけでなくコイル自体の抵抗値も同時に求めることができる

contourtable

誘電体と導体の両方が含まれるモデルの電界解析を行いたい

  • 電場調和電場で駆動する周波数をして解析する事で「誘電体」と「導体」両方が含まれる形での解析ができます。
  • 「誘電体」(=ε)と「導体」(導電率=σ)が含まれる場合の計算は「導電率」を複素数で表した形で計算され、内部では「複素導電率」(σ+jωε)で表現された複素数計算を行います(ω=角周波数,j=虚数単位)。
  • 「複素導電率」は周波数が低いと「導体」に近い挙動を示し、周波数が高くなると、「誘電体」に近い挙動を示します。モデル図計算結果コンター図
  • 解析の結果、電極間の容量と抵抗が同時に得られます。計算結果テーブル