概要:
シミュレーションの結果が妥当なものかどうかについて、実験値と比較するという取り組みが一般的によく行われています。そもそも理論解が求まるような問題というのはあまり多くありません(そのためにFemtetのような数値解析が利用されます)が、Femtet自体を開発する段階では理論解と比較し解析結果が正しいかどうかを常に検証しています。ここでは簡単な平行平板キャパシタの容量についてFemtetの解析結果と理論解が一致するかどうかを確認検証してみます。
まずは理論解とFemtetの結果を比較:
平行平板キャパシタの容量の理論解はよく知られるように、真空の誘電率をε0、比誘電率をεr、電極面積をS、電極間隔をdとすると以下のように表せます。
C=ε0*εr*S/d
Femtetで境界条件1[V],0[V]を設定し、比誘電率εr=10、キャパシタサイズを10[mm] x 5[mm] x 3[mm]として解析を行います。ここで注意が必要なのは解析の利便性を考えモデルの外側に自動的に空気領域を自動作成する機能が働くのですがこの機能をOFFにしておく必要があります。こうする事でキャパシタの部分のみがメッシュ生成されるので理論解と全く同じ状況のモデルを作成する事ができます。

Femtetで解析すると容量は、C=1.476[pF]という値が得られます。一方理論解を求めると、
C=8.854e-12*10*0.010*0.005/0.003 =1.476[pF]
となりこのモデルでのFemtetの解析結果と理論解は完全に一致します。

周囲に空気があると想定したモデル:
次にモデルとしては同じ形状ですが、[解析条件]->[メッシュの設定]タブで「空気領域を自動作成する」にチェックを入れて解析すると、モデルの周囲に空気領域が自動で生成された解析が行われる。

この場合のFemtetの解析結果はC=1.663[pF]となり、理論解の1.476[pF]より13%大きい値となりました。

結果の考察:
周囲に空気がある場合にFemtetで解析した結果の容量は一見すると理論解からずれているように思えますが、このモデルでは理論解で考慮されていない、電極の縁端効果による容量も含んだ解析を行っていることになるため理論解よりも大きな容量値が得られたと解釈できます。またここでは比較していませんが、空気領域を自動生成したモデルでも、キャパシタ部分の比透磁率をεr=100,εr=1000と大きくしていくと、空気領域の縁端効果による容量の影響が相対的に小さくなっていくため理論解とFemtetの結果は近づいていきます。今回のように理論解をFemtetで解析しようとするとき理論解とまったく同じ条件で解析できているかは注意深く確認する必要があります。Femtetのような数値解析で解析できる範囲は理論解が求まるよりも広く、理論解が求まるような特別な条件でFemtetを使用して解析した場合数値誤差の影響は若干あるものの基本的にはほぼ同じ解が得られます。