複数の音源に位相差を指定したい

概要:

音波調和解析では周波数を指定して解析しますが、複数の音源がある場合位相をずらして音波を放射させたい場合があります。このような場合にどのように設定するかをご紹介します。

方法1:境界条件で位相を設定する

境界条件「変位」「速度」「加速度」「音響インピーダンス」「圧力」で「位相」を指定して解析する事ができます。

pressure_phase

以下の図は二つの音源が管を伝って放射される解析事例ですが位相を90°ずらして放射しています。

contour_plot

方法2:フィールド表示でポート毎に重み指定をする

音波調和解析の場合材料は線形のためフィールドの重ね合わせを行う事ができます。つまり音源1と音源2があった場合、音源それぞれを振動させた結果を重ね合わせることで両方の音源が振動した結果を合成する事ができるということです。

解析手順としては「フィールド表示でポート毎に重み指定を可能にする」にチェックをして解析し、結果の表示で音源毎の重みと位相を設定することで任意の重みをかけ、任意の位相をずらした結果を合成できます。解析終了後に位相をずらすことができますので位相をずらした結果を複数用意したい場合等に毎回境界条件を変更して解析する必要がなく便利な手法です。

folding_setting1

folding_setting2

folding_setting3

 

超音波の解析

概要:

超音波を解析する場合に注意する点は、周波数が高く、波長が短くなるという点です。音波を精度よく解析するためには、1波長当たり4~6メッシュの細かいメッシュ分割が必要になるため、周波数が高くなると、メッシュ数が極端に多くなる傾向があります。今回はメッシュが多くなる事を考慮し軸対称解析で超音波解析を行ってみます。

解析事例:

  • 軸対称モデル
  • 駆動周波数 1[MHz]
  • 水の損失を考慮するため、音速の虚部を2.8e-3[m/s]とする
  • 波源に1[m/s]の振動速度を与える

model

解析結果:

以下は音圧[Pa]の分布と、音源近くにいくつもの波が存在する事が分かります。

pressure

以下は音圧レベル[dB]のコンター図ですが、超音波は強い直進性があることが分かります。

pressure_level

共鳴する管の解析

概要:

管を模したモデルで音波の共鳴現象を解析します。解析は簡単のため2次元解析で行います。空気領域のみメッシュ生成し、管の入り口に音源を設定して周波数を変えながら音波調和解析を実施します。

model

解析結果:

解析結果の放射インピーダンス(周波数特性)と、共振位置での音圧のコンター図を示します。特定の周波数で放射インピーダンスの値が小さくなり、共振現象が起きていることが分かります。

result

音響インピーダンス境界と開放境界の使い分けについて

概要:

音響インピーダンス境界も開放境界も音波を吸収する事を想定した境界条件ですが、使用する場面に違いがあります。開放境界は音波が無限遠に向かって広がっていく場合に使用し、音波が1方向に進むような場合は音響インピーダンス境界を使います。

開放境界とは:

開放境界は、音圧は音源からの距離Rに反比例すると仮定しています。音源が障害物のない空間に置かれた場合、音源から遠く離れたところでは、音圧は1/Rで減衰しますのでこの境界条件が使用できます。音源に近くなると音圧は複雑になり、1/R^2などの高次の項も含まれますが、解放境界条件ではこの高次の項もある程度考慮されています。

音響インピーダンス境界とは:

音響インピーダンスは音波の通りにくさを示し、音圧Pを体積速度Svで割った値として定義されます。

Z=P∕Sv [Pa/(m2・m/s)]=P/Sv[(Pa・s)/m3]  (1)

境界条件として与える音響インピーダンスは単位面積当たりの量として以下の式で与えます。

Z=P∕v [Pa/(m/s)]=P/v[(Pa・s)/m]  (2)

として与えます。一方、pとvは運動方程式でつながっており、ρを密度、cを媒質の音速とすると、調和音波の場合以下の関係がある。

Z=ρc[kg/m3・m/s]=ρc[kg/(m2・s)]=ρc[(N・s2)/m・1/(m2・s)]=ρc[(Pa・s)/m]  (3)

(2)式と(3)式の単位が一致することでも(2)が(3)で表わせることが分かる。参考として以下に空気と水の音響インピーダンスを示す。

(例)空気の音響インピーダンス

Z = 1.205[kg/m3]*340[m/s]=409.7[kg/(m2・s)]=409.7 [N・s/m3]

(例)水の音響インピーダンス

Z = 997[kg/m3]*1500[m/s]=1.496e6[kg/(m2・s)]=1.4596e6[N・s/m3]

開放境界と音響インピーダンス境界の例:

以下の図は左端の2つの管から放たれた音波が広い空間に出たあと広がっていく様子を解析した例である。半円部分に「開放境界」条件を設定することで音波が自然に広がっているのが分かります。

open_boundary

一方以下の図のように管の内部に空気が満たされれており管の上部分から放たれた音波が管内部の空気を伝って2手に分かれている。分かれた音波が管から出るところに空気の音響インピーダンスである409.7[N・s/m3]の値を境界条件として設定する事で、反射せず平面波が管から出ていく様子の解析ができているのが分かります。

impedance_boundary

解析終了後に位相を変更したい

概要:

音波調和解析では音源から発生する音波を別々に処理する事で、計算終了後に重ね合わせて表示する事が可能です。

解析手順:

  • [解析条件]-[調和解析]で「フィールド表示でポート毎に重み指定を可能にする」にチェックを入れ、解析を実行します。
  • 解析設定model

結果表示:

  • 解析終了後のフィールド表示画面で、[解析結果]タブ、[表示内容]グループで「フィールド重ね合わせ設定」を選択し、境界条件毎に「位相(Phase)」を変更します。Result SettingResult Field