共振解析の結果が「未収束」になる場合の対処方法について

概要:

共振解析では振動モード(変形形状)を表すために振動の様子を適切に表せるように、想定される波長の4~6等分程度にはメッシュを細かく切っておく必要があります。例えば以下のモデルは片方が固定されている片持ち梁なので、基本モードは梁が左右に揺れるモード(1/4波長)、となる、2次のモードは3/4波長となります。このように高次の振動モードを表すためには波長(周波数)に応じてメッシュを細かくする必要がでてきます。

求めようとしている共振モードに対して想定されるメッシュサイズが大きすぎる場合(すなわち求めたい共振モードの周波数が高く、波長が短いような場合)、共振モードをうまく求めることができず、モードタイトルに「未収束」と表示される場合があります。「未収束」の共振モード、共振周波数は解析精度が悪いため目安として採用出来る場合もありますが、基本的には結果は使用してはいけません。

model

対処方法:

振動モードが「未収束」となる場合の対処方法としては以下のような対策が有効です。

  • 振動を表せるようにメッシュを細かくする
  • 計算する共振モードの数を減らす(計算する共振モード数を減らすことで高次モードの計算数が減る)

計算例:

以下のようにメッシュを細かくすることで「未収束」のモードを無くすことができました。

coarse_mesh

dense_mesh

指と電極の間の容量計算

概要:

指と電極の間の容量値の計算を行います。指は導体と考えられますので、指の表面に電位境界(1[V])を設定し、電極についても同様に電位境界(0[V])を与えて解析を行います。指の形状や電極の形状は実際に合わせより複雑なモデルをご用意いただければさらに詳細な解析が可能ですが、今回は指も電極も単純な形状で解析を行っています。

 

model

解析結果:

解析結果の電位図(コンター図)、容量値は以下の図のようになります。容量値は「計算結果テーブル」を表示する事で取得する事ができます。

result

超音波の解析

概要:

超音波を解析する場合に注意する点は、周波数が高く、波長が短くなるという点です。音波を精度よく解析するためには、1波長当たり4~6メッシュの細かいメッシュ分割が必要になるため、周波数が高くなると、メッシュ数が極端に多くなる傾向があります。今回はメッシュが多くなる事を考慮し軸対称解析で超音波解析を行ってみます。

解析事例:

  • 軸対称モデル
  • 駆動周波数 1[MHz]
  • 水の損失を考慮するため、音速の虚部を2.8e-3[m/s]とする
  • 波源に1[m/s]の振動速度を与える

model

解析結果:

以下は音圧[Pa]の分布と、音源近くにいくつもの波が存在する事が分かります。

pressure

以下は音圧レベル[dB]のコンター図ですが、超音波は強い直進性があることが分かります。

pressure_level

圧電共振解析で共振時の変位量を知りたい

概要:

共振解析を行うと、共振周波数、共振モード(変形形状)を求めることができますが、結果の変位は無限大(不定)となってしまいます。これは共振解析は入力エネルギーが決まらないため、結果として出力エネルギーが決めれないというのが理由です。このようにして求めた共振解析結果の変位、応力、ひずみなどの結果は下図左のように「変位(相対値)」とかかれています。この(相対値)は複数のモード間の相対値というわけでもありませんので、実際の変位量を比較して知ることもできません。あくまで変形形状が分かるという意味合いになります。

ただし、圧電共振解析で「電圧」の境界条件で与えた状態で解析する場合は状況が変わってきます。この場合印加した「電圧」による入力エネルギーが分かるため、結果の変位は入力エネルギーを使う事で正しい変位量に補正することができます。圧電共振解析で解析した場合は「共振時の変位」を補正する事で正しく求めることができます。下右図はそのようにして求めた変位量ですが、ラベルが「変位」となっており、相対値ではない事が分かります。

Displacement

静電力により変形した形状を求める

概要:

今回は2本のアルミの棒に電圧をかけることで、片持ち梁がひきつけあう力を解析します。「電界解析」による静電力を使った「応力解析」が必要になるため、「電場解析」と「応力解析」を選び連成解析を行います。

解析モデルの設定:

モデル形状としては2つのアルミの棒を作図し、電気的な境界条件「電位」と機械的な境界条件「変位固定」の両方が必要になります。「変位固定」をしないと応力解析時に静電力により梁が自由に移動できることになるため、物体のどこかを「固定」しておくのは忘れがちですが重要な境界条件です。空気領域は自動で作成されるため作図不要です。アルミの棒の材料は材料データベースから選びます。

model

解析結果:

計算結果の静電力(節点力)の結果のベクトル図より、アルミの棒同士が引き合っているのが分かります。また応力解析で変位ベクトルと変形図を表示するとアルミ棒が引き合って変形していることも分かります。

result

共鳴する管の解析

概要:

管を模したモデルで音波の共鳴現象を解析します。解析は簡単のため2次元解析で行います。空気領域のみメッシュ生成し、管の入り口に音源を設定して周波数を変えながら音波調和解析を実施します。

model

解析結果:

解析結果の放射インピーダンス(周波数特性)と、共振位置での音圧のコンター図を示します。特定の周波数で放射インピーダンスの値が小さくなり、共振現象が起きていることが分かります。

result

2軸グラフの表示(Real/Imag)

概要:

圧電解析の結果として、Sパラメータ、Yパラメータ、Zパラメータなどの情報が得られますがこれらの数値は複素数で表されています。通常は[dB]などの表示で大きさのみで評価する事が多いと思いますが、複素数ですので、実部、虚部、位相など複素数の数値の成分を見ることができます。グラフを2軸表示にする事で実部と虚部を同じグラフに表示する事ができますので今回はその手順についてご紹介いたします。

手順:

  1. グラフのプロパティで、Y軸の複素数表示形式を「Real」に変更、対数表示をOFFに設定、Y第2軸の複素数表示形式を「Imag」に変更
  2. グラフを「ダブルクリック」し「系列情報」を表示
  3. Y軸(第2軸)で表示にチェックを入れ、「OK」ボタンを押す。

Property

SeriesSettings

結果:

以下のような2軸グラフを描くことができました。2軸に表示するものは実部、虚部以外にも位相や大きさなど様々な項目が表示できますのでぜひいろいろとお試しください。

2AxisGraph

平行平板キャパシタの容量の理論値についての考察

概要:

シミュレーションの結果が妥当なものかどうかについて、実験値と比較するという取り組みが一般的によく行われています。そもそも理論解が求まるような問題というのはあまり多くありません(そのためにFemtetのような数値解析が利用されます)が、Femtet自体を開発する段階では理論解と比較し解析結果が正しいかどうかを常に検証しています。ここでは簡単な平行平板キャパシタの容量についてFemtetの解析結果と理論解が一致するかどうかを確認検証してみます。

まずは理論解とFemtetの結果を比較:

平行平板キャパシタの容量の理論解はよく知られるように、真空の誘電率をε0、比誘電率をεr、電極面積をS、電極間隔をdとすると以下のように表せます。

C=ε0*εr*S/d

Femtetで境界条件1[V],0[V]を設定し、比誘電率εr=10、キャパシタサイズを10[mm] x 5[mm] x 3[mm]として解析を行います。ここで注意が必要なのは解析の利便性を考えモデルの外側に自動的に空気領域を自動作成する機能が働くのですがこの機能をOFFにしておく必要があります。こうする事でキャパシタの部分のみがメッシュ生成されるので理論解と全く同じ状況のモデルを作成する事ができます。

model1

Femtetで解析すると容量は、C=1.476[pF]という値が得られます。一方理論解を求めると、

C=8.854e-12*10*0.010*0.005/0.003 =1.476[pF]

となりこのモデルでのFemtetの解析結果と理論解は完全に一致します。

contour1

周囲に空気があると想定したモデル:

次にモデルとしては同じ形状ですが、[解析条件]->[メッシュの設定]タブで「空気領域を自動作成する」にチェックを入れて解析すると、モデルの周囲に空気領域が自動で生成された解析が行われる。

model_with_air

この場合のFemtetの解析結果はC=1.663[pF]となり、理論解の1.476[pF]より13%大きい値となりました。

contour_with_air

結果の考察:

周囲に空気がある場合にFemtetで解析した結果の容量は一見すると理論解からずれているように思えますが、このモデルでは理論解で考慮されていない、電極の縁端効果による容量も含んだ解析を行っていることになるため理論解よりも大きな容量値が得られたと解釈できます。またここでは比較していませんが、空気領域を自動生成したモデルでも、キャパシタ部分の比透磁率をεr=100,εr=1000と大きくしていくと、空気領域の縁端効果による容量の影響が相対的に小さくなっていくため理論解とFemtetの結果は近づいていきます。今回のように理論解をFemtetで解析しようとするとき理論解とまったく同じ条件で解析できているかは注意深く確認する必要があります。Femtetのような数値解析で解析できる範囲は理論解が求まるよりも広く、理論解が求まるような特別な条件でFemtetを使用して解析した場合数値誤差の影響は若干あるものの基本的にはほぼ同じ解が得られます。

音響インピーダンス境界と開放境界の使い分けについて

概要:

音響インピーダンス境界も開放境界も音波を吸収する事を想定した境界条件ですが、使用する場面に違いがあります。開放境界は音波が無限遠に向かって広がっていく場合に使用し、音波が1方向に進むような場合は音響インピーダンス境界を使います。

開放境界とは:

開放境界は、音圧は音源からの距離Rに反比例すると仮定しています。音源が障害物のない空間に置かれた場合、音源から遠く離れたところでは、音圧は1/Rで減衰しますのでこの境界条件が使用できます。音源に近くなると音圧は複雑になり、1/R^2などの高次の項も含まれますが、解放境界条件ではこの高次の項もある程度考慮されています。

音響インピーダンス境界とは:

音響インピーダンスは音波の通りにくさを示し、音圧Pを体積速度Svで割った値として定義されます。

Z=P∕Sv [Pa/(m2・m/s)]=P/Sv[(Pa・s)/m3]  (1)

境界条件として与える音響インピーダンスは単位面積当たりの量として以下の式で与えます。

Z=P∕v [Pa/(m/s)]=P/v[(Pa・s)/m]  (2)

として与えます。一方、pとvは運動方程式でつながっており、ρを密度、cを媒質の音速とすると、調和音波の場合以下の関係がある。

Z=ρc[kg/m3・m/s]=ρc[kg/(m2・s)]=ρc[(N・s2)/m・1/(m2・s)]=ρc[(Pa・s)/m]  (3)

(2)式と(3)式の単位が一致することでも(2)が(3)で表わせることが分かる。参考として以下に空気と水の音響インピーダンスを示す。

(例)空気の音響インピーダンス

Z = 1.205[kg/m3]*340[m/s]=409.7[kg/(m2・s)]=409.7 [N・s/m3]

(例)水の音響インピーダンス

Z = 997[kg/m3]*1500[m/s]=1.496e6[kg/(m2・s)]=1.4596e6[N・s/m3]

開放境界と音響インピーダンス境界の例:

以下の図は左端の2つの管から放たれた音波が広い空間に出たあと広がっていく様子を解析した例である。半円部分に「開放境界」条件を設定することで音波が自然に広がっているのが分かります。

open_boundary

一方以下の図のように管の内部に空気が満たされれており管の上部分から放たれた音波が管内部の空気を伝って2手に分かれている。分かれた音波が管から出るところに空気の音響インピーダンスである409.7[N・s/m3]の値を境界条件として設定する事で、反射せず平面波が管から出ていく様子の解析ができているのが分かります。

impedance_boundary