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輻射面のチェックについて
熱伝導解析(Watt)において熱境界条件→輻射の設定「表面間(精度重視)」(モデル間の輻射)が設定された場合、
同一グループの輻射面上の節点と要素間においてお互いが見えるかどうか(障害物で隠れてないかどうか)
のチェックを解析の始めの段階で実施します。これが「輻射面のチェック」です。
この輻射面のチェックの手法として、「三重ループ法」と「マッピング法」と「Hemicube法」があります。
このテクニカルノートでは「三重ループ法」と「マッピング法」と「Hemicube法」の内部処理の違いについておおまかに説明します。
三重ループ法
三重ループ法でのチェック処理は大まかには以下のような流れになっています。
同一グループ輻射面上における
1.要素ループまたは節点ループ
2.そのループの中で要素ループ
3.そのループの中でその節点と要素の間を遮る要素があるかチェックする要素ループ
という、名前の通り、三重ループ処理となっておりワーストケースで計算数が
「面-面(時間重視)」の場合に要素数×要素数×要素数、「点-面(精度重視)」の場合に節点数×要素数×要素数、となります。
すなわち三重ループ法では要素数が増えると3乗則に比例して処理時間が増大する欠点があります。
とくにこの傾向は3次元解析において顕著です。
マッピング法
一方でマッピング法では大まかには以下のような流れになっています。
同一グループ輻射面上における
1.要素ループまたは節点ループ(要素または節点を視点とする)
2.要素ループ1(1の視点から見た各要素の距離をマッピングする※1)
3.要素ループ2(各要素が他の要素に隠れてないかをチェックする※2)
となっており、三重ループ法と異なるのは2のループが完全に終了してから3のループが始まる点です。
計算数は輻射ソルバーが「面-面(時間重視)」の場合は要素数×(2×要素数)、「点-面(精度重視)」の場合は節点数×(2×要素数)となります。
すなわち、三重ループ法が三重ループ処理であったのに対してマッピング法は二重ループ処理になっています。
これによって3次元解析において要素数が多い場合、輻射面チェックの時間が短縮されます。
この短縮の度合いは要素数が多いほど顕著となります。
マッピング法の設定

上記の※1のマッピングにおいては各要素の距離情報を2次元の配列変数上に記録しています。
この記録の際に、同一箇所ですでに記録済みの距離と比較を行い、距離が短い場合のみ
距離を更新しています。
マップ分解能ではこのマップの分解能を設定することができます。視野角90度あたりの分解能を
設定します。初期状態では90となっており、1度毎に距離の差をマッピングすることができる設定
となっています。
上記の※2の各要素が他の要素に隠れていないかのチェックという部分ではマップ上に記録された
距離と各要素の視点からの距離を比較して、一致しているかどうかを判定します。
遮る要素が存在する場合は記録された距離の方が短いということになります。
距離一致判定値では記録された距離が各要素との距離の何倍以上であれば一致
一致している(見えている)と判定するかどうかを設定します。
マップ分解能が粗い(メッシュが細かい)場合でもこの判定値を甘く(小さく)することで、三重ループ法との
差異を低く維持することができる可能性があります。
ただし、この判定値が甘すぎる(小さすぎる)と輻射面の位置関係によっては
実際には他の要素に遮られているのに見えているといった誤判定を招く可能性もあります。
三重ループ法とマッピング法の差異を評価するでは三重ループ法とマッピング法で輻射面チェックの結果の差
を輻射グループ毎にパーセント表示することができます。輻射ソルバーが「点-面(精度重視)」の場合のみ設定ができます。
この機能は三重ループ法とマッピング法の両者でチェックを行いますので、トータルの輻射面チェック時間は両者の和となり長くなります。
この結果の差異が大きい場合(数パーセント以上など)は三重ループ法を用いる法が無難ですが、
マッピング法の設定値を変更(分解能を高くしたり、距離一致判定値を甘くする)することで
この差異が改善される可能性もあります。
三重ループ法とマッピング法での処理時間の比較
熱伝導解析例題9の物体間の輻射のモデルでメッシュサイズを変更し、
三重ループ法とマッピング法での処理時間の比較を行った結果を以下に示します。

メッシュ数が多くなるにつれてマッピング法によるチェック時間の高速化の比率が増大していることが分かります。
Hemicbe法
Hemicube法は面-面輻射でのみ使用できる方法になります。
Hemicube法では要素の中心にカメラを設置し、周囲の要素をGPUで内部的に描画することで可視判定します。
大まかには以下のような流れになっています。
1. 要素ループ(要素を視点とする)
2. 全要素面をGPUで一括描画
3. ピクセルループで形態係数の計算
となっており、計算数は要素数xピクセル数(Hemicubeの上面+側面x4)となります。
要素面をGPUで一括描画する処理があるため、高性能なディスクリートGPUを用いると計算時間が短縮されます。
Hemicube分解能はHemicube一面に対する一辺のピクセル数になります。


