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回転を考慮した解析(MRF)
流体解析[Bernoulli]のオプションである回転を考慮した解析(MRF: Multiple Reference Frame )について説明します。
回転機械の流れ場解析に広く用いられるMRF法は、固定した領域(静止域)と回転領域(RRFゾーン)の同時取り扱いを可能とし、インペラ・ファン・ポンプ等の定常解析に有効な手法です。
1. MRF法
1.1 概要
MRF(Multiple Reference Frame)法は、モデルの一部体積を回転座標系(相対系)、他の体積を静止座標系(絶対系)として同時に解く定常解析手法です。
回転体(ロータ)と静止体(ステータ)の相互干渉を、格子の相対滑りなしに、コリオリ・遠心力として考慮します。
一定角速度で定常回転する流れ(擬似定常)に適用します。
1.2 求解している方程式
「流体解析/熱流体解析で求解している微分方程式」を参照してください。
1.3 適用範囲と制限
適用が有効なケース
・ファン、ポンプ、ブロワ、遠心機、攪拌槽など、一定回転数での定常性能評価(流量-圧力、トルク)
・ロータ–ステータ干渉を平均化して見たい場合(ブレード通過による非定常性を平均化できる場合)
・複数の回転軸があるが、回転領域間の距離が十分あり、干渉が弱い場合
不向き/注意が必要なケース
・強い非定常(ブレードの通過、時間的に変化する回転数、サージング、ストール)のある回転流れ
・周方向位相を扱う必要がある場合(ブレード通過による周方向の非定常性など)
・複数の独立回転軸が強く干渉する場合
・回転領域の側面の流入や浮力を考慮した解析など、回転領域内の流れに非対称性がある場合
Femtetでは時間的に変化する回転数を取り扱うことができますが、時間ごとの疑似定常な解しか得られません。
そのため、時間変化による非定常効果を考慮することができません。
また、回転領域同士の干渉が強い場合(ブレード通過による強い非定常や近接相互作用が支配的な場合)は、MRFは原理的に「定常近似」なので不適または精度が不足しやすいです。
非定常性を考慮したい場合、Femtetでは解析できませんがスライディングメッシュと呼ばれる手法が一般的です。
他にも、回転領域内の流れに非対称性がある場合はMRFでは不適であり、スライディングメッシュで解析する必要があります。
2. FemtetでのMRF法使用にあたって
解析条件>回転を考慮した解析(MRF)にチェックを入れた場合、有効になります。
設定方法の詳細は「解析条件の設定>流体解析>回転を考慮した解析(MRF)」を参照ください。
2.1 回転領域(RRF ゾーン)
回転部材(インペラ、ファンブレード等)を完全に内包する円筒形・円環形などの体積を定義します。
周囲の静止部品とは複数メッシュ分離れていることが望ましいです。
インペラ先端が 回転領域からはみ出してはいけません。
回転領域に静止壁や回転しない非軸対称の固定シャフトを含めることはできません。
複数の回転領域が重なるような解析はできません。
回転領域のサイズは内部と外部の境界で準定常仮定が成り立つ領域サイズがよいとされていますが、明確なガイドラインはなく、一般的にはインペラやバッフルに近すぎないようにすべきとされています。[1]
インペラやバッフルに近いと、MRFモデルでは考慮されない非定常効果が増大する可能性があるためです。
そのため、攪拌槽や遠心ファンなど遠心方向に流れを生じるものは回転領域幅を大きめに、軸流ファンなど軸方向に流れを生じる場合は軸方向に大きめに設定すると計算精度が向上するとされています
回転領域サイズが計算結果に及ぼす影響を調査する研究は複数あります[2][3]が、結論としては計算モデルやレイノルズ数により必要なサイズが異なるというものです。
回転領域サイズの指標として、インペラ高さ、インペラ直径を元に大きさを決定するケースが多く、
Femtetでは回転領域設定方法として「固体領域に設定」を選択すると、インペラサイズを元に指定したサイズ比の回転領域が作成されます。
デフォルトでは複数の論文で使用されているインペラ高さ、直径比1.5倍というサイズが設定されています。[2][3][4]
設定方法の詳細は「解析条件の設定>流体解析>回転を考慮した解析(MRF)」を参照ください。
2.2 回転条件
回転軸ベクトル(方向)と中心座標、角速度を指定します。
2.3 境界条件
回転領域内の境界条件について、下記の注意点がございます。
回転領域と静止領域間の界面は特に境界条件を設定する必要はありません。
回転領域内で境界条件を指定しない場合、非滑り条件として適用されます。
回転領域内の流速系の境界条件は回転に対する相対速度として定義されます。
回転領域内の固体壁>静止壁境界条件は、回転に対する相対的な静止壁として定義されます。
回転領域内の固体壁>移動壁境界条件は、絶対座標系における回転が定義されます。
そのため、回転領域内で絶対速度0としたい場合、移動壁の回転速度0を指定してください。
2.4 初期条件
静止状態、または剛体回転流を初期速度場として与えて収束を補助できます。
また、過渡解析として徐々に回転数を上げていく設定にすることで収束性を改善できることがあります。
設定方法は「解析条件の設定>流体解析>回転を考慮した解析(MRF)」を参照ください。
2.5 メッシュサイズ
回転領域の設定方法を「固体領域」として回転領域を自動作成した場合
メッシュサイズは以下のように決定されます。
・「解析条件の設定>流体解析>回転を考慮した解析(MRF)」でメッシュサイズを指定できます。
・上記でメッシュサイズを指定していない場合、インペラの形状やインペラに指定したメッシュサイズから
Femtet内部のアルゴリズムにより自動でメッシュサイズを決定します。
回転領域の設定方法を「流体領域」として回転領域を指定した場合
メッシュサイズは、インペラから回転領域と静止領域の界面までできれば複数メッシュ確保できるようなサイズを指定してください。
インペラボディのメッシュサイズが粗すぎると、インペラボディに引っ張られてインペラと回転領域の界面のメッシュサイズが粗くなってしまい、計算が発散することがあります。
インペラボディのメッシュサイズもできれば回転領域のメッシュサイズと同等にしてください。
2.6 計算が発散する場合
MRF解析ではFemtetのデフォルトの緩和係数は大きすぎる場合があり、緩和係数の調整が有効なケースがあります。
詳細やその他の対策については、「流体解析/熱流体解析が収束しない場合」を参照ください。
また、2.4初期条件の設定で改善する場合もあります。
参考文献
[1] Mittal & Kikugawa, 2021. Computational fluid dynamics simulation of a stirred tank reactor. Mater. Today Proc., 46, 11015–11019.
[2] A. D. de la Concha-Gómez et al., 2019. Effect of the rotating reference frame size for simulating a mixing straight-blade impeller in a baffled stirred tank. Rev. Mex. Ing. Quím., 18(3), 1143–1160.
[3] Deglon & Meyer, 2006. CFD modelling of stirred tanks: Numerical considerations. Minerals Engineering, 19, 1059–1068.
[4] Ali et al., 2020. CFD simulation model for mixing tank using MRF impeller rotation. Int. J. Tech. Res. Sci. (ICACCG2020), p. 17.


