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流体解析の境界条件

ここでは、流体解析の境界条件の設定方法の考え方について説明します。

各設定項目の説明については「流体タブ(熱流体タブ)」を参照してください。

1. 流体周囲の境界条件

流体の周囲の面はの境界条件は、壁境界条件か流れ境界条件のいづれかになります。

ここでは壁境界条件と流れ境界条件について説明します。

また、境界条件が設定されていない箇所の扱いについても説明します。

1.1 壁境界条件

流体の出入りが発生しない面に設定します。

固体壁[静止壁]、固体壁[移動壁]とスリップ壁があります。

 

以下のような違いがあります。

 

 

固体壁[静止壁]

固体壁[移動壁]

スリップ壁

壁面上流速

ゼロ固定

壁に沿う方向:指定値に固定

法線方向の流速はゼロ

 

 

法線方向の流速のみゼロ

 

壁面せん断応力

流速に応じて発生

 

壁面速度と流速に応じて発生

発生しない

用途

固体との境界に設定
(固体ボディとの境界には自動的に設定されます)
  
内部流れの外部境界条件

運動している物体の表面

流体の出入りのない仮想的な壁
対称境界条件

  
外部流れの外部境界条件

1.2 流れ境界条件

流体の出入りが発生する面に設定します。

流入、流出、流入/流出があります。

流入すると分かっている面には流入、流出すると分かっている面には流出を設定します。

流入するか流出するか分からない面には流入/流出を設定します。

 

また、流れ境界条件は、強制流入、強制流出などの強制的に流れを与える境界(強制境界)と、それ以外の境界(自然境界)に分けられます。

流れ境界条件の設定方法については「4.流れ境界の組み合わせ」に詳細を示します。

1.3 境界条件の自動設定機能

流体の周囲の面で、壁境界条件、流れ境界条件が設定されていない箇所が存在する場合、自動的に境界条件が設定されます。

固体材料が設定されているボディとの境界

自動的に固体壁が設定されます。

それ以外の境界

外部境界条件」で設定した条件が設定されます。

外部境界条件のデフォルトは固体壁になっています。

2. 基本の設定手順

通常は、「1.3境界条件の自動設定機能」を活用し、以下の手順で境界条件を設定します。

手順1.外部境界条件で周囲の境界条件を設定

周囲の境界条件として一般的に使われるのは以下の3つです。(3. 内部流れと外部流れ参照)

 

・壁境界条件「固体壁」

・壁境界条件「スリップ壁」

・流れ境界条件「流入/流出:自然流入/流出」

 

スリップ壁や自然流入/流出を使用する場合、ダイアログの「境界条件の種類」でスリップ壁、流入/流出を選択します。

外部境界条件のデフォルトは固体壁のため、固体壁を使用する場合、設定不要です。

手順2.流入、流出する面を選択して流れ境界条件を設定

流入境界条件、流出境界条件を少なくとも1箇所ずつ設定します。

3. 内部流れと外部流れ

3.1 内部流れの境界条件設定

固体に囲まれた領域の流れのことを内部流れと言います。

例として、配管内部の流れ、筐体内部の流れ等が挙げられます。

強制対流の場合

内部流れの解析を行う場合、流路のボディを作成し、流入してくる面に流入境界条件、流出する面に流出境界条件を設定します。

流路のボディの周囲は固体で囲まれているため、外部境界条件は、固体壁の設定が妥当な境界条件となります。

 

青線部:流れ境界条件黒線部:壁境界条件固体壁

 

例:

流体解析チュートリアル

例題1 平行平板間の流れ(層流)

例題2 平行平板間の流れ(乱流)

密閉領域の場合

固体に囲まれた領域で、流入、流出がない場合、密閉領域となります。

密閉領域での解析を行う場合、密閉領域の流体ボディを作成します。

外部境界条件は、固体壁の設定が妥当な条件となります。

流路ボディを固体で囲んだ形状を作成しても問題ありません。

 

黒線部:壁境界条件固体壁

 

密閉領域内部の流れは、浮力を考慮する場合/しない場合で扱いが異なります。

・浮力を考慮する場合

内部の自然対流を計算します。

・浮力を考慮しない場合

内部の流れは計算しません。熱流体解析では、流体内部の熱伝導による伝熱のみが考慮されます。

密閉領域が狭く、自然対流の影響が小さい場合、浮力を考慮しない設定にすることで計算時間を短縮することができます。

 

3.2 外部流れの境界条件設定

固体周囲の流れのことを言います。

例として、飛行機周りの流れ等が挙げられます。

強制対流の場合と自然対流の場合で境界条件の設定方法が異なります。

強制対流の場合

対象となる固体ボディを直方体で囲み、流入してくる方向の面全体に流入境界条件(流入の種類:強制流入速度指定)、
流出していく方向の面全体に流出境界条件(流出の種類:自然流入)を設定します。

解析領域には一様な流れが流入、流出するため、外部境界条件は、スリップ壁が妥当な境界条件となります。

外部境界条件でスリップ壁を選択し、スリップ壁境界条件を設定します。

 

青線部:流れ境界条件黒線部:固体壁、オレンジ線部:スリップ壁

 

例:

例題3 円柱周りの流れ

例題1 強制対流による平板の放熱(層流)」(熱流体解析)

例題2 強制対流による平板の放熱(乱流)」(熱流体解析)

例題3 強制対流による基板上のICの放熱」(熱流体解析)

 

自然対流の場合

対象となる固体ボディを直方体で囲みます。

周囲のすべての面で自由に流体が出入りする条件とするため、外部境界条件は、自然流入/流出が妥当な境界条件となります。

外部境界条件で境界条件の種類「流入/流出」を選択し、自然流入/流出境界条件を設定します。

 

 

青線部:流れ境界条件

 

例:

例題6 自然対流による基板上のICの放熱」(熱流体解析)

例題8 定常解析を初期値とした基板上のICの放熱過程の過渡解析」(熱流体解析)

 

3.4 内部流れ、外部流れの場合の流入乱流量

乱流解析を行う場合、流入してくる流体の乱流状態(乱流エネルギーKとエネルギー散逸率ε)を設定する必要があります。

 

内部流れの場合、流入までの流れ経路で、乱流が発達した比較的強い状態で入ってくることが想定されます。

外部流れの場合、流速が一様のため、弱い状態で入ってくることが想定されます。

 

Femtetでは、自動計算により流入乱流量を指定することができます。

内部流れか外部流れかを判定して、内部流れの場合には強い乱流を、外部流れの場合には弱い乱流を設定します。

 

実際の設定値については、「流体タブ(熱流体タブ)」を参照してください。

4. 流れ境界条件の組み合わせ

モデルに流れを与える場合、必ず流入と流出をセットで設定する必要があります。

非圧縮性流れを前提にしており、流入量と流出量が釣り合うような状態を想定しているためです。

3つ以上の箇所で流入、流出が起こる場合、流入、流出をそれぞれ少なくとも1箇所ずつ設定する必要があります。

 

また、計算を安定して解くためには、流入、流出の種類として、強制的に流れを与える境界(強制流入、強制流出など)と自然境界をセットで設定する必要があります。

3つ以上の箇所で流入、流出が起こる場合、強制境界、自然境界をそれぞれ少なくとも1箇所ずつ設定する必要があります。

ただし、浮力を考慮した解析では、浮力により強制的に流れが生じるため、強制境界がなくても解析することができます。

 

推奨する組み合わせを以下に示します。

 

流入の種類

流出の種類

イメージ図

強制流入(速度指定)

自然流出

赤線部:強制流入青線部:自然流出

強制流入(流量指定)

自然流出

強制流入(圧力指定)

自然流出

強制流入(ファン)

自然流出

自然流入

強制流出(速度指定)

青線部:自然流入赤線部:強制流出

 

 

自然流入

強制流出(流量指定)

 

自然流入

強制流出(圧力指定)

自然流入

強制流出(ファン)

 

流入するのか流出するのか分からない面に対しては、境界条件の種類で「流入/流出」を選択します。

流入時には自然流入(境界条件の種類:流入、流入の種類:自然流入)、流出時には自然流出(境界条件の種類:流出、流出の種類:自然流出)の場合と同じ状態になりますので、
自然流入、自然流出の代用として使用することができます。

 

5. ファン境界条件

ファンは圧力損失の大きい領域に風を送る場合、もしくは、圧力損失の大きい領域から風を排出する場合、より大きなエネルギーを要するため、同じ回転数で回していても、流量が制限されます。

ファン境界条件ではこの性質を考慮した解析を行うことができます。

 

・解析例「例題4 強制流出ファンの解析

5.1 P-Q特性

ファンの特性を示すパラメータとして、P-Q特性というものがあります。

ファン前後に生じる圧力差と体積流量の関係を示すパラメータで、通常、ファンのカタログなどに記載されています。

体積流量がゼロのときに圧力差は最大となり、体積流量が大きくなるほど圧力差は小さくなり、ゼロになります。

 

解析領域内の圧力損失は体積流量を大きくするほど大きくなるため、P-Q特性と交差する点が存在します。

これを動作点と呼びます。

 

ファン前後の圧力差は、二つの定義方法があり、ファンの上流側近傍点とファンの下流側近傍点の静圧差を取る方法と、

ファンの上流側遠方点とファンの下流側近傍点の静圧差を取る方法があります。

一般的に、ファン特性は後者の方法で測定されるため、Femtetでは後者の定義を使用しています。

後者の考え方は、ファン上流側近傍点の静圧と、ファン下流側近傍点の全圧の差を取ることを意味します。

 

5.2 流入ファン

流入流量に応じて環境に対する圧力上昇を与えます。

Femtetでは環境の圧力を0[Pa]として計算しているため、境界条件上(下流側近傍点)での静圧と流量の関係がテーブルで指定した関係になるように計算します。

 

 

圧力上昇と解析領域での圧力損失がほぼ同じとなる体積流量値(動作点)で解析を行います。

軸流ファンにおける下流側の旋回流を考慮する場合は境界条件にて回転数とスリップファクターを入力します。

流入方向法線軸にたいして接線方向に以下の流速が与えられます。

 

     

 

5.3 流出ファン

流出流量に応じて環境に対する圧力降下を与えます。

Femtetでは環境の圧力を0[Pa]として計算しているため、境界条件上(上流側近傍点)での全圧と流量の関係がテーブルで指定した関係になるように計算します。

 

圧力降下と解析領域での圧力損失がほぼ同じとなる体積流量値(動作点)で解析を行います。