例題51

粘弾性材料の変形解析

本例題について

  • 粘弾性材料であるポリスチレン(ガラス転移点48℃)の板をたわませたときの変形挙動をシミュレーションした例を示します。

  • ガラス転移点より低い常温(25℃)と、ガラス転移点よりも高い温度(120℃)での挙動を比較します。

  • 表に記載されていない条件は初期設定の条件を使用します。

  • 粘弾性解析は特別オプション機能です。

解析空間

項目

条件

解析空間

3次元

モデル単位

mm

 

解析条件

ガラス転移点より低い常温(25℃)から、ガラス転移点よりも高い温度(120℃)に切り替えて解析をするため、

解析オプションとして熱荷重を設定します。

 

項目

条件

ソルバ

応力解析[Galileo]

解析の種類

静解析

解析オプション

熱荷重をチェック

 

ステップ/熱荷重タブの設定を以下のように行っています。

タブ設定

設定項目

条件

ステップ/熱荷重

ステップ設定

多段階熱荷重解析

時刻設定

設定する

基準温度

25[deg]

ステップ/到達温度設定

解析ステップ

時刻[s]

分割ステップ

到達温度[deg]

1

60

5

25

2

3540

5

25

3

3600

5

25

4

3660

5

120

5

3720

5

120

6

7200

5

120

7

7260

5

120

 

複数ステップ解析オプション

分割ステップの結果を出力する:チェック

 

25度を基準温度(無応力温度)と設定しています。

粘弾性解析では時刻が必要なので、ステップ設定を「複数ステップ」、時刻設定を「設定する」とし、ステップ/到達温度設定に、
時刻、分割ステップ、到達温度を設定します。

 

以下の履歴の解析を分割数5ずつで解析を行います。

 

ステップ1:60s:1minかけてたわみ荷重を徐々に印加

ステップ2:3540s:約1hrたわみ荷重を保持

ステップ3:3600s:1minかけてたわみ荷重を徐々に小さくする

ステップ4:3660s:1minかけて120℃まで加熱

ステップ5:3720s:1minかけてたわみ荷重を徐々に印加

ステップ6:7200:約1hrたわみ荷重を保持

ステップ7:7260:1minたわみ荷重を徐々に小さくする

 

分割ステップの結果の出力するをオン(初期条件)にしているため、各ステップの分割ステップでの解析結果を

すべて出力することができます。

モデル図

厚さ0.4mmの薄いポリスチレンの板を直方体のソリッドボディを定義し、ポリスチレン(PS)の材料を設定します。

 

ボディ属性および材料の設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ属性名

材料名

0/Solid

Plate

PS

 

ポリスチレン(PS)の材料定数は以下のように設定しています。

ここでは線膨張係数による変形を考慮しないため、線膨張係数はゼロとしました。

材料名

タブ

定数

PS

弾性定数

材料の種類: 弾性-等方性

温度依存性: なし

材料定数:

ヤング率:1.39 x 109 [Pa]

ポアソン比:0.35

粘弾性

粘弾性の入力形式:プロニー級数[係数入力]

緩和タイプ:せん断成分のみ

緩和テーブル:

 

温度依存性(シフト関数):WLF

参照温度:113℃

C1:8.86

C2:101.6

 

線膨張係数

0×10-6[1/deg]

参考:

弾性定数(ヤング率、ポアソン比):化学便覧 基礎編II 改訂4版 日本化学学会編 丸善(1993)

粘弾性定数:エンジニアのためのプラスチック材料工学 Osswald/Menges著 武田邦彦監修 シグマ出版

境界条件

境界条件名/トポロジ

タブ

境界条件の種類

条件

Fix_all/Face

機械

変位

XYZ成分のチェックボックスをオン

UX=0, UY=0 UZ=0

Pz/Edge

機械

線分布荷重

トータル荷重で入力するのチェックボックスオン

X=0, Y=0, Z=-1.0×10-2

 

時間依存:あり

これにより、以下の荷重設定を行います。

60s:1minかけてたわみ荷重を徐々に印加

3540s:約1hrたわみ荷重を保持

3600s:1minかけてたわみ荷重を徐々に小さくする

3720s:1minかけてたわみ荷重を徐々に印加

7200:約1hrたわみ荷重を保持

7260:1minたわみ荷重を徐々に小さくする

解析結果

時刻3540s(25℃で、約1hrたわみ保持をしたあと)の変形図、および、

時刻7200s(25℃で、約1hrたわみ保持をしたあと)の変形図を示します。

コンター図は左:変位の大きさを示してます。

 

時刻3540[s]の変形図(温度:25℃)

 

時刻7200[s]の変形図(温度:120℃)

 

120℃では、同じたわみ荷重でも、大きく変形していることが分かります。

次に、先端での変位の大きさをグラフ表示したものを示します。

 

 

25℃では、たわみ荷重保持中には、変位が一定になり、荷重がなくなると

もとの変位に戻る、弾性体としての性質を示しますが、

120℃では、たわみ荷重保持中に変位が増加していく様子が見られ、

荷重がなくなっても、変形が残る、粘弾性体としての性質を示すことが分かります。

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