例題7

ダイポールアンテナ

本例題について

  • 完全整合層(PML)を用いた、ダイポールアンテナの解析事例を示します。

  • 表に記載されていない条件は初期設定の条件を使用します。

  • 「計算時間の短縮方法」

  • 美しいアニメションの作り方を、このページの最後に書きました。

 

解析空間

項目

条件

解析空間

3次元

モデル単位

mm

 

解析条件

項目

条件

ソルバ

電磁波解析[Hertz]

解析の種類

調和解析

解析オプション

面(辺)電極の厚みの影響を無視するをチェック※

※本オプションは初期設定条件ですでにチェックが入っています。本例題では面電極は

 ありませんので、チェックがなくても結果には影響しません。

 

調和解析および開放境界の設定を以下のように行っています。

タブ設定

設定項目

条件

メッシュ

要素の種類

1次要素

マルチグリッド/アダプティブ法

アダプティブメッシュを使用するをチェック

周波数依存メッシュの設定

参照周波数:5×109[Hz]

表皮厚みより厚い導体ボディ境界条件とするをチェック

 

本設定によってANTENNAの厚みが表皮厚みより厚いため、

ANTENNAの表面はステンレス材料の損失を有する境界条件が適用されます。

調和解析

周波数

最小 3×109[Hz]

最大 6×109[Hz]

間隔

等間隔をチェック

分割数: 100

スイープの設定

高速スイープを選択

Sパラ変化量: 1×10-3

入力

1.0[W]

開放境界

種類

PML(完全整合層)

整合層の厚み

0.2波長※

※初期設定値は0.3波長ですが、計算時間短縮の為0.2波長に変更しています。

モデル図

直方体の空気領域の中央付近に、2本の導体を作成しました。導体は直方体のソリッドボディとしています。導体をつなぐ

ようにシートボディを作成し、入出力ポートの境界条件を設定しました。

 

 

ボディ属性および材料定数の設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ属性名

材料名

3/Solid

ANTENNA

104_ステンレス鋼※

4/Solid

ANTENNA

104_ステンレス鋼※

5/Sheet

転写用

 

6/Solid

AIR

000_空気※

※材料データベースを利用

 

 

境界条件

境界条件名/トポロジ

タブ

境界条件の種類

条件

PORT/Face

電気

入出力ポート

基準インピーダンス:指定する

 をチェックし、50Ωを指定する。

モード数:

 導波路の計算で求めるモード数: 5

 実際に3次元解析で使用するモード数: 1

  モードの選択:チェックしない

OPEN/Face

電気

開放境界

解析条件の開放境界タブでPMLに設定

外部境界条件

電気

電気壁

 

 

解析結果

 

4.5GHz近傍で共振が得られていることがわかります。

 

 

 

メッシュ/計算結果図を見ると、下図のようにRESERVED_pml_xxという名前のボディ属性を持った完全整合層が、

自動的に生成されていることが分かります。(下図のPMLという緑色の文字は、理解を助けるための注釈で、解析結果ウィンドウ

画面に表示されるものではありません)

 

 

放射特性の見方

放射特性を見る為に、極座標系図を見て極座標を理解してください。極座標のφ、θは、観測点の位置を表す為、また、

極座標の単位ベクトルは、偏波方向を指定する為に必要です。 今、ダイポールアンテナを含む、XZ面とYZ面

での放射特性を、ダイポールアンテナと電界が平行となる偏波について調べます。

 

指向性計算ダイアログで、”観測点の位置”、φの設定を、最小値0[deg]、最大値 90[deg]、分割数1 の設定にし、

φ=0[deg](XZ面に対応)、φ=90[deg](YZ面に対応)の面上で放射特性の計算をします。偏波方向は、”表示

の種類”で”rE(θ)”を選択することで指定します。これは極座標系の単位ベクトルeθに平行な電界成分をもつ、

偏波成分を取り出す事を意味します。つまりθ=0の時、ダイポールアンテナと電界が平行となる偏波を見る事になります。

下の放射パターン図を見てください。ダイポールアンテナの8の字の放射特性が得られました。

 

下の表には代表的な放射パターンを表示する為の設定を、示しています。

注意:下のダイアログで、周波数が5GHzだけ表示されているのは、5GHzだけを計算した時の結果を使ったからです。

 

  • 指向性計算ダイアログの各設定ボタンの意味は、 電磁波指向性表示 をご覧ください。

 

 

              指向性計算ダイアログの図                                 放射パターン図

 

観測点の移動する面

偏波

観測点の位置(φ、θ)

表示の種類

設定、グラフの横軸

XZ面、YZ面

φ(0,90,1)、θ(-180,180,100)

rE(θ)

θ

XZ面、YZ面

φ(0,90,1)、θ(-180,180,100)

rE(φ)

θ

XY面

φ(-180,180,100)、θ(90,90,0)

rE(θ)

φ

XY面

φ(-180,180,100)、θ(90,90,0)

rE(φ)

φ

 

理論解との比較

半波長ダイポールアンテナの理論界と放射パターンの比較を行いました。計算の条件は以下のとおりです。

・周波数 5.01GHz(アンテナの長さが、(1/2)波長になるような周波数を選択)

・XZ面で観測した場合の放射特性。観測点の位置の設定は、φ(最小値:0[deg],最大値:90[deg],分割数:0)、θ(最小値:-180[deg],最大値:180[deg],分割数:100)。

・表示の種類:POWER,、単位:dBi。

・電磁波指向性計算タブで、利得の種類、受け入れ電力基準を選択しました。操作方向は、次通りです。指向性計算ダイアログの、”その他の設定”ボタンを押すと、”電磁波指向性設定”ダイアログが表示されます。そこで、利得の種類、受け入れ電力基準を選択しました。

参考図書: 電波工学の基礎 実教出版 本郷廣平著

 

美しい放射のアニメーションの作り方

4.5GHzでのアニメーション

見栄えの良い放射のアニメーションを作るには、空気領域を広くとります。1波長以上の空間を用意しましょう。
大きな空気領域を作成したうえにPMLを使用すると、メッシュ数が増えて解析が困難になります。
吸収境界を利用して、メッシュ数の増加を抑制します。

また、メッシュサイズを小さくする方が美しいアニメーションが描けます。
本例題で扱ったモデルと違う設定項目のみを記述します。
下図、左がモデル図、右が解析結果として得られた電界のコンター図です。
空気領域の球の中心をとおり、アンテナを含む面で断面図をとりました。

 

 

 

■設定項目

 解析条件 -> 開放境界タブ-> 吸収境界

 解析モデル->空気領域の大きさ 半径60

 解析モデル->メッシュサイズ 4

  解析->メッシュ解析の設定->要素の種類 2次要素

 

■描画時の解析結果ウィンドウの状態

  • [解析タイプ]: 電磁波解析

  • [モード]: 4.5GHz

  • [フィールドタイプ]: 電界

  • [成分]: 大きさ

  • [位相]: 90°※

  • [スケール]: Log

※ コンター図の見た目の分かりやすさのための設定です。作成されるアニメーションには影響ありません。

 

■描画設定のコンタータブ

  • “自動”のチェックを外す

  • 最小値: 100

  • 最大値: 1000

 

■断面図

空気領域の中心を通りYZ平面に平行な断面をコンターで表示すると、上の右側のような図が得られます。
アニメーションを作成すると本節の最初のアニメーションのように、電磁波が放射される様子を見ることができます。

 

  • アニメーションの作り方は、「アニメーションの作成」をご覧ください。

  • プロジェクト(保存してから開いてください。)
    この解析をするには、50GB以上のメモリーをもった、64bit PCが必要と思われます。
    適当なPCを用意できない場合、次のいずれか、または複数の手段を組み合わせて、計算コストを削減してください。

  • メッシュサイズを大きくする: 操作は「メッシュタブ」をご覧ください。

  • 要素の種類を1次要素にする: 操作は「メッシュタブ」をご覧ください。

  • アダプティブメッシュを使用しない: 操作は「メッシュタブ」をご覧ください。

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