例題30

対称面や無限グランド面を持つアンテナの解析

本例題について

  • ダイポールアンテナの対称性を利用した解析モデル(全体、1/2、1/4)を示します。

  • 無限グランド面を持つモノポールアンテナの解析方法を示します。

  • 表に記載されていない条件は初期設定の条件を使用します。

  • ダイポールアンテナの解析については「電磁波解析例題7 ダイポールアンテナ」もご覧ください。

解析空間

項目

条件

解析空間

3次元

モデル単位

mm

 

解析条件

項目

条件

ソルバ

電磁波解析[Hertz]

解析の種類

調和解析

解析オプション:特性インピーダンス補正係数

1.0 (ダイポールアンテナ(全体、1/4モデル)、モノポールアンテナ)

2.0 (ダイポールアンテナ(1/2モデル))

解析オプション

面(辺)電極の厚みの影響を無視するをチェック※

※本オプションは初期設定条件ですでにチェックが入っています。本例題では面電極は

 ありませんので、チェックがなくても結果には影響しません。

 

調和解析および開放境界の設定を以下のように行っています。

タブ設定

設定項目

条件

調和解析

周波数

最小 3×109[Hz]

最大 6×109[Hz]

間隔

等間隔をチェック

分割数: 100

スイープの設定

高速スイープを選択

Sパラ変化量: 1×10-3

入力

1.0[W]

開放境界

種類

吸収境界

吸収境界の次元

1次

 

 

モデル図

ダイポールアンテナの全体モデル、1/2モデル、1/4モデルを示しています。
モノポールアンテナのモデルは、ダイポールアンテナの1/2モデルと同じです。
全てのモデルは、銅から成るANTENNAボディ、空気のAIRボディとポートから構成されます。

 

ダイポールアンテナの全体モデルは、ANTENNAとポートを空気の球が囲んでいます。

 

ダイポールアンテナの1/2モデルとモノポールアンテナは、ANTENNAとポートを空気の半球が囲んでいます。
半球の平面はXY面上にあり、電気壁境界条件(EWall)を設定しています。
1/2モデルにおいては、この電気壁が対称性を意味する境界条件になります。

 

1/4モデルは、1/2モデルをさらに、ANTENNAを含むYZ面で切り取った形をしています。
この切り取ったYZ面には磁気壁の境界条件(MWall)を設定しています。
この磁気壁も対称性を意味する境界条件になります。

 

 

  • 境界条件の電気壁、磁気壁については、「電気タブ」をご覧ください。

ボディ属性および材料定数の設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ名

材料名

0/Solid

ANTENNA

008_銅Cu※

3/Solid

AIR

000_空気※

6/Sheet

転写ボディ

 

※材料データベースを利用

 

境界条件

境界条件名/トポロジー

タブ

境界条件の種類

条件

EWall/Face

電気

電気壁

 

MWall/Face

電気

磁気壁

 

PORT/Face

電気

入出力ポート

基準インピーダンス: 指定するをチェックし、
  50Ωを入力

モード数:
  導波路の計算で求めるモード数: 5
  実際に3次元解析で使用するモード数: 1
  モードの選択:チェックしない

外部境界条件

電気

開放境界

解析条件の開放境界タブにて設定

 

メッシュ/解析の設定

設定項目

条件

周波数依存メッシュの設定

参照周波数:5×1010[Hz]

参照周波数には、アンテナの長さから予測していた共振周波数の値を入れました。

 

解析結果1: 対称面を持つダイポールアンテナの解析結果の比較

まずダイポールアンテナの特性が、全体モデル、1/2モデル、1/4モデルで一致する事を確認します。

 

アンテナの反射特性を、Sパラメータとインピーダンスのスミスチャートで確認します。
[解析結果]タブの[チャート] から[SYZ行列]を実行し、
[SYZ行列]ダイアログの[XY_Graph]や[SmithChart]を実行すると、
それぞれに応じた形でグラフが出力されます。

 

  • [SYZ行列]ダイアログについて、詳しくは「SYZ行列」をご覧ください。

 

全体モデル、1/2モデル、1/4モデルの反射特性を、図1に示します。
反射特性はよく一致していることが分かります。

 

図1 ダイポールアンテナの全体モデル、1/2モデル、1/4モデルの反射特性

 

 

次に、アンテナの放射特性を表す指向性を確認します。
[解析結果]タブの[チャート] から[指向性]を実行し、
[指向性計算]ダイアログの[電磁波指向性計算]タブを表1のように設定します。
ただし、対称面と無限グランド面の設定は、モデルに応じて表2のように設定します。
[Polarグラフ]を実行すると、指向性が図2のようにPolarグラフで図示されます。

 

  • [電磁波指向性計算]タブについて、詳しくは「電磁波指向性計算について」をご覧ください。

 

全体モデル、1/2モデル、1/4モデルの指向性を、図2に示します。
ただし、反射の少ない4.5GHzで比較を行いました。
放射特性もよく一致していることが分かります。

 

表1 [電磁波指向性計算]タブの設定

タブ設定

設定項目

条件

電磁波指向性計算

周波数

4.500000 GHz

観測点の位置

φ
最小値: 0 [deg]
最大値: 0 [deg]
分割数: 0

θ
最小値: -180 [deg]
最大値: 180 [deg]
分割数: 72

表示の種類

POWER

単位

dBi

対称面と無限グランド面の設定

表2を参照

設定

グラフの横軸: θ

その他の設定
入力方法: 分割数
効率の種類: 放射
利得の種類: 入力電力基準

 

表2 対称面と無限グランド面の設定

モデル

XY面

YZ面

ZX面

ダイポールアンテナ 全体モデル

対称性なし

対称性なし

対称性なし

ダイポールアンテナ 1/2モデル

電気壁

対称性なし

対称性なし

ダイポールアンテナ 1/4モデル

電気壁

対称性なし

磁気壁

モノポールアンテナ

無限グランド面

対称性なし

対称性なし

 

 

図2 ダイポールアンテナの全体モデル、1/2モデル、1/4モデルの放射特性

 

解析結果2: 無限グランド面を持つモノポールアンテナの解析結果

無限グランド面を持つモノポールアンテナの特性を調べます。
同一モデルのダイポールアンテナの1/2モデルの特性をと比較します。

 

まず、2つのアンテナの反射特性を比較します。

Sパラメータのグラフとスミスチャートは、図3のように得られます。
図3のスミスチャートから、インピーダンスの虚部が0に近い周波数は4.59GHzと分かり、
この周波数での各アンテナのインピーダンスZは、次のように読み取れます。

 

  •   ダイポールアンテナ: Z = 64.019 + j 0.159 [Ω]

  •   モノポールアンテナ: Z = 31.334 – j 1.883 [Ω]

 

モノポールアンテナのインピーダンスが、ダイポールアンテナの半分になっている事が確認できます。
これは、ダイポールアンテナとモノポールアンテナで同じ電流が流れた場合に、
モノポールアンテナに加わる電圧はダイポールアンテナに加わる電圧の半分になる事を意味しています。
これは妥当な結果と考えられます。

 

図3 ダイポールアンテナ(1/2モデル)とモノポールアンテナの反射特性

 

 

次に、放射特性の比較を行います。
[指向性計算]ダイアログの[電磁波指向性計算]タブを表3・4のように設定すると、
図4のような指向性グラフが得られます。
図4から、モノポールアンテナの方が、利得が約3dBよくなっていることが確認できます。

 

表3 [電磁波指向性計算]タブの設定

タブ設定

設定項目

条件

電磁波指向性計算

周波数

4.590000 GHz

観測点の位置

φ
最小値: 0 [deg]
最大値: 0 [deg]
分割数: 0

θ
最小値: -180 [deg]
最大値: 180 [deg]
分割数: 72

表示の種類

POWER

単位

dBi

対称面と無限グランド面の設定

表2を参照

設定

グラフの横軸: θ

その他の設定
入力方法: 分割数
効率の種類: 放射
利得の種類: 入力電力基準

 

表4 対称面と無限グランド面の設定

モデル

XY面

YZ面

ZX面

ダイポールアンテナ 1/2モデル

電気壁

対称性なし

対称性なし

モノポールアンテナ

無限グランド面

対称性なし

対称性なし

 

 

図4 ダイポールアンテナ(1/2モデル)とモノポールアンテナの放射特性

 

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