例題33 導波管を伝搬する特定の伝搬モードの解析

本例題について

  • 方形導波管の周波数特性を解析した事例を示します。

  • 特定の伝搬モードのみを選択して解析を行うことができます。
    本例題では、TE20のみの解析を行うこととします。
    また、周波数を10GHzから20GHzまで1GHz刻みで変化させることとします。

  • TE20の導波路解析モード番号を調べるステップ(ステップ1)と、
    TE20を選択して解析を行うステップ(ステップ2)の2段階で解析を行います。
    最初にステップ1とステップ2での共通の設定を説明し、
    次にステップ1、ステップ2の順番で説明します。

  • 計算結果として、Sパラメータと電磁界分布を見ることができます。

共通設定

ステップ1とステップ2とで共通の設定を説明します。

解析空間

項目

条件

解析空間

3次元

モデル単位

mm

解析条件

項目

条件

ソルバ

電磁波解析[Hertz]

解析の種類

調和解析

解析オプション

面(辺)電極の厚みの影響を無視するをチェック※

※本オプションは初期設定条件ですでにチェックが入っています。
本例題では面電極はありませんので、チェックがなくても結果には影響しません。

 

調和解析の設定を以下のように行っています。

タブ設定

設定項目

条件

メッシュ

要素の種類

2次要素

マルチグリッド/アダプティブ法

アダプティブメッシュを使用するをチェック

周波数依存メッシュの設定

参照周波数:20×109[Hz]

表皮厚みより厚い導体ボディ境界条件とするをチェック

 

本例題では導体のソリッドボディはありませんので、

上の周波数依存メッシュの設定のチェックの有無は解析には影響しません。

モデル図

方形導波管の形状を直方体ソリッドボディで定義しています。
導波管ボディ(WAVEGUIDE)の両端に入出力ポートの境界条件を設定しています。

ポートには、積分路を設定しています。
積分路には、ポートに生じる電界の、位相0度での向きを指定する働きがあります。
位相は、積分路付近の電界が積分路の向きで、電界の大きさが最大となるときを0度とします。
ポートに積分路を付けなければ、位相0度の向きがポートごとに異なる計算結果が得られる可能性があります。
また、本例題で解析したいTE20は、下の図のような電界分布になるので、
積分路は、付近の電界が大きく向きがそろっている、中心より片側に寄った場所に付けます。

ボディ属性および材料定数の設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ属性名

材料名

0/Solid

WAVEGUIDE

000_空気※

※材料データベースを利用

境界条件

境界条件名/トポロジ

タブ

境界条件の種類

条件

外部境界条件

電気

電気壁

 

 

ステップ1: 伝搬モードの導波路解析モード番号を調べる

Femtetの電磁波解析では、1つの伝搬モードに“導波路解析モード番号”と
“導波路モード番号”(3次元解析で使う導波路モード番号)という2つの番号を与え、
必要なときにいずれかの番号を用いて伝搬モードを識別します。
特定の伝搬モードのみの解析に必要な番号は導波路解析モード番号です。

 

  • 導波路解析モード番号と導波路モード番号について、
    詳しくは「電磁波解析ポートの見方」をご覧ください。

解析条件

先に示した共通の解析条件に加え、ステップ1では解析条件を次のように設定します。
ステップ1では、特定の伝搬モードの解析を行いたい周波数のうち、最大周波数で解析を行う必要があります。
本例題では、TE20モードを10GHzから20GHzで解析することを考えているので、
ステップ1では最大周波数の20GHzで解析を行います。

タブ設定

設定項目

条件

電磁波解析

Hertzオプション

導波路解析のみを実行するをチェック

調和解析

周波数

20×109[Hz]

スイープタイプ

ひとつの周波数をチェック

高速スイープの設定

逐次スイープ

入力

1.0[W]

フィールド表示でポート毎に重み指定を可能にするのチェックを外す

※ひとつの周波数だけで解析を行うので、高速スイープの設定は何を選択しても逐次スイープと同じになります。

境界条件

先に示した共通の境界条件に加え、ステップ1では各境界条件を次のように設定します。

境界条件名/トポロジ

タブ

境界条件の種類

条件

PORT1/Face

電気

入出力ポート

基準インピーダンス:
ポート構造から算出される特性インピーダンスを使うをチェック

モード数:
導波路の計算で求めるモード数: 5
実際に3次元解析で使用するモード数: 3
モードの選択:チェックしない

PORT2/Face

電気

入出力ポート

基準インピーダンス:
ポート構造から算出される特性インピーダンスを使うをチェック

モード数:
導波路の計算で求めるモード数: 5
実際に3次元解析で使用するモード数: 3
モードの選択:チェックしない

解析結果

計算される5つのモード別に、ポートの電界のベクトル図と伝搬定数を次の表に示します。
表には、電界ベクトル図からわかる伝搬モードも示しています。
電界の形から、“1: 2.000000e+010Hz: ( 1)”がTE20であることが分かります。
このとき、TE20の導波路解析モード番号は、周波数に続くカッコの中の数字の“1”です。

モード

電界ベクトル図

伝搬定数

伝搬モード

0: 2.000000e+010Hz: ( 0)

ポート名       (位相定数)-j(減衰定数)
PORT1     p1m1: 4.000024e+002 +j 0.000000e+000
PORT2     p2m1: 4.000024e+002 -j 3.918000e-029

TE10

1: 2.000000e+010Hz: ( 1)

ポート名       (位相定数)-j(減衰定数)
PORT1     p1m2: 3.355935e+002 +j 0.000000e+000
PORT2     p2m2: 3.355964e+002 -j 1.697081e-029

TE20

2: 2.000000e+010Hz: ( 2)

ポート名       (位相定数)-j(減衰定数)
PORT1     p1m3: 2.776503e+002 +j 0.000000e+000
PORT2     p2m3: 2.776511e+002 -j 7.496914e-030

TE01

3: 2.000000e+010Hz: ( 3)

ポート名       (位相定数)-j(減衰定数)
PORT1     NG: 2.475654e+002 +j 0.000000e+000
PORT2     NG: 2.475478e+002 -j 1.981504e-029

TE11

4: 2.000000e+010Hz: ( 4)

ポート名       (位相定数)-j(減衰定数)
PORT1     NG: 2.474887e+002 +j 0.000000e+000
PORT2     NG: 2.474635e+002 +j 6.981761e-029

TM11

 

  • 計算されたモードの中に所望の伝搬モードが含まれていないときは、
    導波路の計算で求めるモード数を増やして、解析をやり直してください。

 

  • 所望の伝搬モードの伝搬定数に“NG”と表示される場合は、
    その伝搬モードは3次元解析では使用されません。
    実際に3次元解析で使用するモード数を“NG”表記のある導波路解析モード番号より
    大きな値に変更して解析をやり直すと“NG”表示が無くなり、
    ポート番号と導波路モード番号(pxmy)が表示されます。

 

以上で、TE20の導波路解析モード番号は1と分かりました。

ステップ2: 伝搬モードを選択して解析する

解析条件

ステップ2では、ステップ1で設定した解析条件を、次のように変更します。

タブ設定

設定項目

条件

電磁波解析

Hertzオプション

導波路解析のみを実行するのチェックを外す

調和解析

スイープ値

最小周波数: 10×109[Hz]
最大周波数: 20×109[Hz]
周波数間隔: 1×109[Hz]

スイープタイプ

等間隔 周波数間隔をチェック

高速スイープの設定

高速スイープ
Sパラメータ変化量: 1×10-3

入力

1.0[W]

フィールド表示でポート毎に重み指定を可能にするをチェック

境界条件

境界条件は、次のように変更します。
モードの選択で、解析したい伝搬モードの導波路解析モード番号をチェックします。
TE20の導波路解析モード番号は1なので、モードの選択でmode01をチェックします。

境界条件名/トポロジ

タブ

境界条件の種類

条件

PORT1/Face

電気

入出力ポート

基準インピーダンス:
 ポート構造から算出される特性インピーダンスを使うをチェック

モード数:
導波路の計算で求めるモード数: 5
モードの選択をチェック
mode01をチェック

PORT2/Face

電気

入出力ポート

基準インピーダンス:
 ポート構造から算出される特性インピーダンスを使うをチェック

モード数:
導波路の計算で求めるモード数: 5
モードの選択をチェック
mode01をチェック

 

  • モードの選択に選択肢として表示されるモードの数は、
    導波路の計算で求めるモード数の数です。
    所望の導波路解析モード番号のモードが表示されていない場合は、
    導波路の計算で求めるモード数を変更してください。

解析結果1: フィールド

TE20をPORT1から入射したときのフィールドを確認します。
まず、所望の伝搬モードの導波路モード番号を調べ、
次に、導波路モード番号を使って所望の伝搬モードのフィールドを表示する設定を行います。

 

まず、TE20の導波路モード番号を調べます。

[解析結果]タブで[解析タイプ]をポートにし、[モード]の最大周波数の中から
TE20を表す導波路解析モード番号1のモードを選択し、[伝搬定数]ダイアログを表示します。
伝搬定数の「pxmy」という表記の、x はポート番号を、y は導波路モード番号を表します。
最大周波数20GHzで導波路解析モード番号1であるモード“51: 2.000000e+010Hz:( 1)”の
伝搬定数が次のように表示されるので、TE20の導波路モード番号は“1”であることが分かります。

伝搬定数

ポート名       (位相定数)-j(減衰定数)

PORT1     p1m1: 3.355935e+002 +j 0.000000e+000

PORT2     p2m1: 3.355964e+002 -j 2.527736e-027

 

次に、TE20のフィールドを表示するための設定を行います。

[解析結果]タブで[解析タイプ]を電磁波解析にし、[フィールド重ね合わせの設定]ダイアログを開きます。
各ポートの伝搬モードごとに、MAGとPHASEを設定できます。
「PortName:my」という表記の、PortName はポートの境界条件名を、y は導波路モード番号を表すので、
PORT1にTE20を入射するときのフィールドを見るためには、PORT1:m2のMAGを“1”とし、
他のMAG及びPHASEを“0”とします。
[モード]で表示したい周波数を選び、[フィールドタイプ]で表示させたいフィールドを選択すると、
PORT1にTE20を入射したときのフィールドを見ることができます。

 

  • PORT2にTE20を入射したときのフィールドを見るためには、PORT2:m1のMAGのみを“1”とします。
    [フィールド重ね合わせの設定]の詳しい解説は、「フィールド重ね合わせの設定」をご覧ください。

 

[フィールド重ね合わせの設定]ダイアログで次のように設定したときの、
いくつかのモード(周波数)での電界のベクトル図を示します。
電界ベクトル図から、周波数が12GHzよりも小さいときは、
PORT1に入射したTE20はPORT2へは透過しないことが分かります。

 

PortName

MAG

PHASE[deg]

PORT1:m1

1.0

0.0

PORT2:m2

0.0

0.0

 

モード

電界のベクトル図

0: 10.000000 GHz

1: 11.000000 GHz

2: 12.000000 GHz

6: 16.000000 GHz

10: 20.000000 GHz

解析結果2: Sパラメータ

導波管のSパラメータを確認します。
[解析結果]タブの[チャート]から、SYZ行列を実行します。
[SYZ行列]ダイアログのポートインデックスを見ると、Sパラメータの添え字が
どのポートのどの伝搬モードに対応しているかを知ることができます。
いま、ポートインデックスを見ると、次のように表示されています。

ポートインデックス

1: PORT1:m1
2: PORT2:m1

本例題では、導波路モード番号1(m1)はTE20を表すことに注意すると、
4つのSパラメータはそれぞれ次のような意味を持つことが分かります。

  • S(1,1): PORT2への入射がないときの、PORT1へのTE20の入射波とPORT1でのTE20の反射波の比

  • S(1,2): PORT1への入射がないときの、PORT2へのTE20の入射波とPORT1へのTE20の透過波の比

  • S(2,1): PORT2への入射がないときの、PORT1へのTE20の入射波とPORT2へのTE20の透過波の比

  • S(2,2): PORT1への入射がないときの、PORT2へのTE20の入射波とPORT2でのTE20の反射波の比

 

[SYZ行列]ダイアログの行列の成分から(1,1)と(2,1)を選んで[XY_Graph]をクリックすると、
下のようなSパラメータのグラフが得られます。
TE20は、12GHzより小さい周波数ではPORT1からPORT2への透過が小さく、12GHz以上でよく透過するという、
電界のベクトル図で得られた結果をSパラメータで確認することができます。

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