例題36

ダイプレクサ

本例題について

  • 導波管ダイプレクサの解析例を示します。

  • 電磁波の周波数によってその伝搬の様子が大きく異なるため、複数の周波数でアダプティブメッシュを行います。

  • 表に記載されていない条件は初期設定の条件を使用します。

解析条件

項目

条件

ソルバ

電磁波解析[Hertz]

解析空間

3次元

解析の種類

調和解析

単位

mm

 

 

メッシュおよび調和解析の設定を以下のように行っています。

タブ設定

設定項目

条件

メッシュ

メッシュ設定

メッシャG2 を使用するにチェック (*1)

メッシュのコントロール

波長あたりの分割数: 波長あたりの分割数を設定するのチェックを外す (*2)

アダプティブメッシュの設定

最大反復回数: 10 (*3)

最小反復回数: 0

アダプティブメッシュを行う周波数を設定するを選択

 

周波数

精度

1

255

2.0

2

285

2.0

指数

9

-2

単位

[Hz]

[-]

周波数依存メッシュの設定

参照周波数: freq_ref × 109 [Hz] (freq_ref = 285)

調和解析

スイープタイプ

等間隔 周波数間隔

スイープ値

最小周波数: 240 × 109 [Hz]

最大周波数: 300 × 109 [Hz]

周波数間隔: 0.5 × 109 [Hz]

周波数スイープ

高速スイープ

 

本例題では、参照周波数を変数で設定しておくことにします。変数名は freq_ref とし、初期値として285を与えます。

 

*1) 本例題はボディが1つしかないためメッシャG2を使用する効果は現れにくいですが、
ボディが多いモデルではメッシャG2を使うことでメッシュ時間が短縮できます。詳しくは「メッシャG2」をご覧ください。

 

*2) 本例題では、アダプティブメッシュを行う周波数の違いを見やすくするため、このオプションのチェックを外します。
通常はこのオプションのチェックを入れておく方が、アダプティブメッシュによる最適メッシュの生成に効果があります。
詳しくは「メッシュのコントロール」をご覧ください。

 

*3) 本例題は、解析時間を短くするために最大反復回数を10回としていますが、
ダプティブメッシュは10回の反復では収束せず、未収束のままアダプティブメッシュを終了します。
そのため、解析精度はあまりよくないと考えられます。
アダプティブメッシュを収束させるには、最大反復回数を増やしてください。

モデル図

ボディ属性および材料定数の設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ名

材料名

33/Solid

AIR

000_空気※

※材料データベースを利用

境界条件

境界条件名/トポロジー

タブ

境界条件の種類

条件

PORT1/Face

電気

入出力ポート

積分路: なし

ポートの種類: 電力ポート

基準インピーダンス: ポート構造から計算される特性インピーダンスを使う

PORT2/Face

電気

入出力ポート

積分路: なし

ポートの種類: 電力ポート

基準インピーダンス: ポート構造から計算される特性インピーダンスを使う

PORT3/Face

電気

入出力ポート

積分路: なし

ポートの種類: 電力ポート

基準インピーダンス: ポート構造から計算される特性インピーダンスを使う

外部境界条件

電気

電気壁

 

解析結果

1. 周波数による電磁界分布の違い

ここでは、ポート1(PORT1)から入った電磁波がどのように伝搬するかを確認します。


図3 電磁波の伝搬の様子(電界の大きさ)

 

図3-Aは、255GHzの電磁波をポート1から入射したときの電界の大きさを示しています。
ポート2(PORT2)の方へ伝搬していき、ポート3(PORT3)の方へは伝搬していかないことがわかります。

 

図3-Bは、285GHzの電磁波をポート1から入射したときの電界の大きさを示しています。
255GHzのときとは反対に、ポート2の方へは伝搬せず、ポート3の方へ伝搬していくことが分かります。

2. アダプティブメッシュを行う周波数の設定によるメッシュの違い

ここでは、参照周波数だけでアダプティブメッシュを行った場合と複数の周波数でアダプティブメッシュを行った場合の、メッシュ形状を比較します。


図4 アダプティブメッシュを行う周波数によるメッシュ形状の違い

 

図4-Aは、参照周波数を255GHz(freq_ref = 255)とし、[アダプティブメッシュの設定]で、
参照周波数でアダプティブメッシュを行うを選択した場合に生成されるメッシュです。
図3-Aに示されているように、255GHzでは電磁波はポート1からポート2へ伝搬し、ポート3へは伝搬しません。
255GHzで電磁波が伝搬するポート1とポート2の間はメッシュが細分化されていますが、
伝搬しないポート1とポート3の間は粗いメッシュが残っていることが分かります。

 

図4-Bは、参照周波数を285GHz(freq_ref = 285)とし、[アダプティブメッシュの設定]で、
参照周波数でアダプティブメッシュを行うを選択した場合に生成されるメッシュです。
図3-Bに示されているように、285GHzでは電磁波はポート1からポート3へ伝搬し、ポート2へは伝搬しません。
285GHzで電磁波が伝搬するポート1とポート3の間はメッシュが細分化されていますが、
伝搬しないポート1とポート2の間は粗いメッシュが残っていることが分かります。

 

図4-Cは、参照周波数は285GHz(freq_ref = 285)としていますが、本例題のように[アダプティブメッシュの設定]で、
アダプティブメッシュを行う周波数を設定するを選択し、255GHzと285GHzを設定した場合に生成されるメッシュです。
255GHzの電磁波が伝搬するポート1とポート2の間も、285GHzの電磁波が伝搬するポート1とポート3の間も、どちらも細分化されていることが分かります。

3. アダプティブメッシュを行う周波数の設定によるSパラメータの違い

ここでは、参照周波数だけでアダプティブメッシュを行った場合と、複数の周波数でアダプティブメッシュを行った場合とのSパラメータを比較します。


図5 参照周波数が255GHzのときのSパラメータの比較

 

図5は、参照周波数を255GHz(freq_ref = 255)としたときの、参照周波数だけでアダプティブメッシュを行った場合のSパラメータと、
255GHzと285GHzの2周波数でアダプティブメッシュを行った場合のSパラメータを示しています。
実線が参照周波数だけでアダプティブメッシュを行ったときのSパラメータを、破線が2つの周波数でアダプティブメッシュを行った場合のSパラメータを表し、
いずれも赤色がS21、青色がS31です。
参照周波数の255GHz付近では2つのSパラメータの差は小さいですが、周波数が255GHzから離れるにつれて差が大きくなってることが分かります。
前節で見たように、参照周波数255GHzだけでアダプティブメッシュを行うと、高周波側で電磁波が伝搬する部分のメッシュが細分化されていませんでした。
そのため、参照周波数の255GHzだけでアダプティブメッシュを行った場合は、高周波側で解析精度が悪くなっています。

 


図6 参照周波数が285GHzのときのSパラメータの比較

 

図6は、参照周波数を285GHz(freq_ref = 285)としたときの、参照周波数だけでアダプティブメッシュを行った場合のSパラメータと、
255GHzと285GHzの2周波数でアダプティブメッシュを行った場合のSパラメータを示しています。
実線が参照周波数だけでアダプティブメッシュを行ったときのSパラメータを、破線が2つの周波数でアダプティブメッシュを行った場合のSパラメータを表し、
いずれも赤色がS21、青色がS31です。

参照周波数の285GHz付近では2つのSパラメータの差は小さいですが、周波数が285GHzから離れるにつれて差が大きくなってることが分かります。
前節で見たように、参照周波数285GHzだけでアダプティブメッシュを行うと、低周波側で電磁波が伝搬する部分のメッシュが細分化されていませんでした。
そのため、参照周波数の285GHzだけでアダプティブメッシュを行った場合は、低周波側で解析精度が悪くなっています。

 

アダプティブメッシュは、それを行う周波数で最適なメッシュを生成します。
参照周波数だけでアダプティブメッシュを行うと、本例題のように電磁波の周波数によって伝搬の様子が大きく異なる場合では、
参照周波数以外の周波数ではメッシュの形状が不適切になってしまう恐れがあります。
電磁波の伝搬のしかたに合わせて複数の周波数でアダプティブメッシュを行うことで、どの周波数にも適したメッシュが生成できます。
アダプティブメッシュについては「アダプティブメッシュ」もご覧ください。

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