例題40 円形パッチアンテナ

  本例題について

  • 誘電体基板上に形成した円形パッチアンテナの過渡解析を行います。
     

  • 共振特性のために精度良いSパラメータを得るためには長い解析時間を必要とします。

  • 解析終了時に残留フィールド比が閾値より高いことから結果予測を行います。

  • 結果予測が正しいことをリスタート解析により確かめます。
     

  • 表に記載されていない条件は初期設定の条件を使用します。

  • 電磁波過渡解析は特別オプション機能です。

解析条件

過渡解析のモデル(Trans)における解析条件の設定は次のようになります。

 

項目

条件

ソルバ

電磁波解析[Hertz]

解析空間

3次元

解析の種類

過渡解析

ポート毎に入力を行うにチェック

単位

mm

 

タブ設定

設定項目

条件

メッシュ

周波数依存メッシュの設定

  • 表皮厚みより厚い導体ボディを境界条件とするをチェック

  • 入力波形から参照周波数を自動決定するをチェック

過渡解析

 

 

入力波の設定

  • 波形の種類:帯域波
  • 最小周波数 3.0×109 [Hz]
  • 最大周波数 6.0×109 [Hz]

  解析終了時刻

  • 2.0×10-9[s] 

 

フィールドを出力するをチェック

 

 

モデル図

基板の表面に円形のシートボディでアンテナパターンを構成し、それらを覆うように半球形状の空気領域を定義

しています。空気領域の球面上には外部境界条件である開放境界が適用されます。空気領域の平面部分には

電気壁が設定されています。入出力ポートは円形のアンテナパターンの中心から少しずれた位置に設定されて

います。

 

ボディ属性および材料定数の設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ名

材料名

Body0/Solid

SUBSTRATE

006_ガラスエポキシ*

Body1/Solid

AIR

000_空気*

Body2/Sheet

PATCH

008_銅Cu*

*材料データベースを利用

境界条件

境界条件名/トポロジー

タブ

境界条件の種類

条件

PORT/Face

電気

入出力ポート

基準インピーダンス:

  • 指定するをチェック

  • 50 Ω

 

積分路:

  • Path1を設定

GND/Face

電気

電気壁

 

外部境界条件

電気

開放境界

解析条件の開放境界タブにて設定

解析結果

電磁波解析(時間領域)の結果テーブルや結果フィールドから円形パッチアンテナにおける共振特性を時間領域で確認できます。また同時に

出力されるSパラメータからも共振特性を確認できます。

 

円形パッチアンテナではポートから入力された電磁波がパッチアンテナ上で共振を起こし、解析終了時刻ではまだモデル内には多くの電磁波

(残留フィールド)が残留しており、その比率は閾値を超えています。そのような場合は周波数領域の結果であるSパラメータの解析精度は良く

ありません。

 

このように残留フィールドが解析終了時刻において閾値を超えている場合、電磁波解析終了後に残留フィールドが小さくなるまでの時刻に

おける出力結果を自動で予測し、それをもとにしたSパラメータの予測結果も出力されます。

 

ここでは円形パッチアンテナにおける共振特性を結果から確認し、その結果と予測結果の比較を行います。また予測結果をもとに解析終了

時刻を設定しなおしリスタート解析することで、予測結果が正しいことを確認します。

 

注意:以下の結果における数値データの値については使用するメッシュによって異なります。

結果テーブル(時間領域)から共振特性を確認する

時間領域の結果テーブルにおける電圧(出力)と残留電界比のグラフは図1のようになります。

図1ではポートにおける出力電圧も残留電界比も入力が終了する時刻(450[ps]あたり)以降においてそれぞれなかなか減衰せず、解析終了

時刻においてもそれらの値が大きな値を示していることがわかります。

(これらのグラフは予測データの表示をオフにしたものです。また残留電界比のグラフではY軸の対数表示をオンにしています。)

 

これは入力された電磁波が共振モードとしてモデル内に長時間蓄えられていることを意味しています。導体損失や誘電体損失、もしくは開放

境界やポートを通して外部へ電磁波が放出されることでモデル内の残留電界比は徐々に小さくなりますが、共振モードがある場合はその減衰

速度は非常に遅くなります。

 

また図1左図の出力電圧より共振モードの周期はおおよそ250[ps] であり、共振周波数はおおよそ4GHzであると読み取れます。

 

    図1:ポートの出力電圧と残留電界比

 

 

結果フィールドから共振特性を確認する

1.5[ns] と1.625[ns] の円形パッチアンテナ近傍の電界を示したものが図2となります。左図の1.5[ns] における電界図ではポート付近の

電界はZ軸の正の方向を向いています。一方1.625[ns] におけるポート近傍の電界では大きさはほぼ同じものの向きはZ軸の負の方向

と1.5[ns] のときと反対を向いています。

 

これは円形パッチアンテナ上で共振を起こしており、およそ125[ps] の周期で電界の向きが反転していることを意味しています。そのため

この共振モードの周期はおおよそ250[ps]であると読み取られ、上記の結果テーブルから読み取った共振周波数と一致しています。

      図2:電界の結果フィールド(左図:1.5[ns] 、右:1.625[ns])

 

予測結果を確認する

次に予測結果を確認します。

このモデルでは5.0[ns] まで結果の予測が行われています。これは5.0[ns] まで解析を行うとモデル内の電磁波はほぼ放出か損失により

消失し残留電界が少なくなると判定されたためです。(注意:メッシュによって予測を終了する時刻に変動が生じます。あくまでも予測は

目安であり、正確な結果ではありません。)

 

残留電界比が閾値を超えており予測が正常に行われた場合、結果テーブルにおいて残留電界比が小さくなる時刻までの予測結果が

出力されます。図3は出力電圧とSパラメータの解析結果(青線)と予測結果(赤線)を示しています。このモデルにおいては解析は2.0[ns]

で終了していますが、その結果をもとに5.0[ns] まで出力結果を予測しています。(注意:フィールドは予測されません。)

 

2.0[ns] までの解析結果をもとに出力されたSパラメータよりも5.0[ns] までの予測結果をもとに出力されたSパラメータの結果のほうがより

明瞭な共振特性を示していることが確認できます。また共振周波数は上記の結果から推測される4GHzに近い値(4.3GHzあたり)となって

います。

 

図3:解析結果と予測結果(左図:出力電圧、右図:Sパラメータ)

 

 

リスタート解析により予測結果の検証を行う

最後にリスタート解析を行うことで予測結果が正しいことを検証します。

 

予測結果から5.0[ns] まで解析を行うと放出か損失によりモデル内の電磁波は消失し、周波数領域の結果であるSパラメータの解析精度が

十分高くなることが期待されます。そこで、図4のようにTransモデルにおいて解析条件の過渡解析タブよりリスタート設定を行います。

 

リスタートの前回の続きにチェックをいれ、解析終了時刻を5.5[ns] に設定します。前回の続きにチェックを入れることで前回の解析(2.0[ns]

までの解析)で使用したメッシュを用いて、前回の続きである2.0[ns] からの解析を行います。また解析終了時刻には念のため予測が行われた

5.0[ns] よりも長い5.5[ns]を設定しています。

 

図4:リスタート解析の設定

 

 

5.5[ns] まで解析を行うとモデル内の残留電界は小さくなり、閾値を下回り解析が自動終了します。

 

図5では出力電圧の結果を示しており、図5右図は2.0[ns] 以降の解析結果と予測結果の比較をしています。図から確認できるように解析結果

と予測結果は一致しており、今回のモデルにおいては予測結果が正しかったことがわかります。

また図6ではSパラメータの比較をしています。図6左図では解析結果と予測結果、図6右図では予測結果と調和解析の結果を比較しています。

これらからも予測結果が正しかったことを確認できます。その反対に2.0[ns] までの解析結果ではSパラメータの結果は精度が低く正しい結果が

得られていないことがわかります。

 

これらのように今回のような共振モードをもつモデルでは電磁波の入力が終わってからも長い時刻の解析を行わないとSパラメータなど周波数領域

の結果の精度が低い場合があります。そのようなモデルに対して予測結果は、

 

  • どこまで解析を行えば良いか
  • おおよそのSパラメータの振る舞い

 

という点において示唆を与えることになります。

 

図5:出力電圧(左図:リスタートによる5.0[ns] までの解析結果、右図:予測結果との比較)

 

図6:Sパラメータ(左図:リスタート解析結果(青線)と予測結果(赤)の比較、

右図:調和解析結果(青線)と予測結果(赤)の比較)

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