例題22

半導体パッケージのジャンクション熱抵抗測定

本例題について

  • 半導体パッケージの熱抵抗θja、θjc、θjb、および熱パラメータΨjt、Ψjbの測定例を示します。
    半導体パッケージの熱抵抗については「熱伝導解析で出力される計算値(テーブル)」を参照してください。

  • 一つ目のモデルでは、自然対流環境を模擬したモデルによりジャンクション-環境熱抵抗θja、熱パラメータΨjt、Ψjbを出力します。

  • 二つ目のモデルでは、パッケージ表面を通してのみ放熱するモデルによりジャンクション-パッケージ表面間熱抵抗θjcを出力します。

  • 三つ目のモデルでは、基板を通してのみ放熱するモデルによりジャンクション-基板間熱抵抗θjbを出力します。

  • 表に記載されていない条件は初期設定の条件を使用します。

解析条件

項目

条件

ソルバー

熱伝導解析[Watt]

解析空間

3次元

解析の種類

定常解析

モデル単位

mm

解析オプション

なし

モデル図

半導体パッケージモデル

シリコンチップ、ジャンクション、インターポーザ、モールド樹脂、はんだからなる、BGAタイプの35mm□半導体パッケージのモデルを作成しています。

ジャンクションをチップ上面にシートボディで作成し、発熱量を与えています。

インターポーザは、4層の配線層と3層の絶縁層から構成されます。

はんだ部は、本来、数100個のバンプで基板と接続しますが、ここでは計算時間の短縮のため、
はんだが存在する領域(周囲部と中央部)の二つをモデル化し、材料定数として等価な異方性熱伝導率を与えています。

 

シリコンチップ、ジャンクション、インターポーザ、モールド樹脂部のメッシュサイズを1.0とします。

はんだ部のメッシュサイズは、標準メッシュサイズとして設定した5.0となります。

 

測定基板モデル

4層の配線層と3層の絶縁層から構成される、4層基板モデル(101.6mmx114.3mmx1.6mm)を作成しています。

JEDEC規格に準拠した寸法でモデル化しています。

測定基板のメッシュサイズは、標準メッシュサイズとして設定した5.0となります。

モデル1、モデル3で使用します。

 

モデル1

測定基板モデルに半導体パッケージモデルを載せたモデルを使用します。

さらに、Ψjt、Ψjb測定する箇所(天面中央と基板から1mm離れた位置)に点ボディを配置し、「測定端子」境界条件を設定しています。

JEDEC規格による測定環境では、密閉容器内での自然対流環境となっていますが、
ここでは容器を無視して、外部境界条件として、「放熱・環境輻射」の自然対流自動計算と環境輻射を設定します。

モデル2

半導体パッケージモデルを使用します。

JEDEC規格による測定環境(コールドプレートを天面に当てた状態)を再現するため、
半導体パッケージモデルの天面に「温度」境界条件を設定します。

さらに、θjc測定する箇所(天面中央)に点ボディを配置し、「測定端子」境界条件を設定しています。

外部境界条件は、初期設定の「断熱」とします。

モデル3

測定基板モデルに半導体パッケージモデルを載せたモデルを使用します。
JEDEC規格による測定環境(コールドプレートで基板を挟んだ状態)を再現するため、
コールドプレートの接触する部分をシートボディでモデル化し、
「温度」境界条件を設定しています。
さらに、θjb測定する箇所(基板から1mm離れた位置)に点ボディを配置し、「測定端子」境界条件を設定しています。

 

ボディ属性および材料の設定

モデル1のボディ属性、材料設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ属性名

材料名

0/Solid

CHIP

Si

1,3,5,7/Solid

LAYER

008_Cu銅※1

2,4,6/Solid

INSULATION_LAYER

006_ガラスエポキシ※1

8/Solid

MOLD

MoldResin

9,12/Solid

SOLDER_LAYER

Solder_Aniso

13/Face

JUNCTION

Si

14,16,17,18/Solid

BOARD_LAYER

008_Cu銅※1

15/Solid

BOARD

006_ガラスエポキシ※1

19,20/Vertex

設定しない※2

設定しない※2

※1 材料データベースを利用

※2 境界条件を付与するための転写用ボディ

モデル2のボディ属性、材料設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ属性名

材料名

0/Solid

CHIP

Si

1,3,5,7/Solid

LAYER

008_Cu銅※1

2,4,6/Solid

INSULATION_LAYER

006_ガラスエポキシ※1

8/Solid

MOLD

MoldResin

9,12/Solid

SOLDER_LAYER

Solder_Aniso

13/Face

JUNCTION

Si

19/Vertex

設定しない※2

設定しない※2

※1 材料データベースを利用

※2 境界条件を付与するための転写用ボディ

モデル3のボディ属性、材料設定

ボディ No./ボディタイプ

ボディ属性名

材料名

0/Solid

CHIP

Si

1,3,5,7/Solid

LAYER

008_Cu銅※1

2,4,6/Solid

INSULATION_LAYER

006_ガラスエポキシ※1

8/Solid

MOLD

MoldResin

9,12/Solid

SOLDER_LAYER

Solder_Aniso

13/Face

JUNCTION

Si

14,16,17,18/Solid

BOARD_LAYER

008_Cu銅※1

15/Solid

BOARD

006_ガラスエポキシ※1

21,22/Face

設定しない※2

設定しない※2

23/Face

設定しない※2

設定しない※2

※1 材料データベースを利用

※2 境界条件を付与するための転写用ボディ

 

JUNCTIONのボディに発熱量と厚みを与えます(モデル1~モデル3共通)。

ボディ属性名

タブ

設定

JUNCTION

発熱量

2[W]

厚み/幅

シートボディの厚み:
1 x 10-3[mm]

 

材料データベースを使用しない材料には以下の材料定数を設定します(モデル1~モデル3共通)。

材料名

タブ

設定

Si

熱伝導率

120[W/m/deg]※1

Mold_Resin

熱伝導率

0.8[W/m/deg]※2

Solder_Aniso

熱伝導率

異方性:異方をチェック

異方性熱伝導率設定※3

0.0293    
0 0.0293  
0 0 24.81

 

 

※1 国峰尚樹著「 エレクトロニクスのための熱設計完全入門」p19

※2 横掘勉、堀野直治著「電子機器設計者のための放熱技術入門」p111

※3 以下の方法で等価熱伝導率を設定しています。

方向1、2(面方向)は熱伝導が空気により遮られるため、材料データベース「000_空気」の値0.0293[W/m/deg]を設定しています。

方向3(高さ方向)は、材料データベース「107_鉛フリーはんだ_SnAgCu」の値にモデル化したはんだ層の面積に対して
実際のはんだバンプが占める割合をかけた値を設定します。

実際のはんだバンプの端子間隔1[mm]、バンプ半径0.35[mm]として、

バンプ面積/1つのバンプを囲む長方形の面積の比 =  π x 0.35 x 0.35 /( 1 x 1 ) = 0.384845

高さ方向の熱伝導率 = 64 x 0.384845 = 24.81 [W/m/deg]

境界条件

モデル1では、測定端子の境界条件と外部境界条件で自然対流、環境輻射を設定します。

モデル2では、温度境界条件を設定します。外部境界条件はモデル1とは異なり、断熱とします。

モデル2では、温度境界条件と測定端子の境界条件を設定します。外部境界条件はモデル1とは異なり、断熱とします。

 

境界条件名/トポロジ

タブ

境界条件の種類

条件

Psi_jt/Vertex(モデル1)

測定端子

Psi_jb/Vertex(モデル1)

測定端子

外部境界条件(モデル1)

放熱・環境輻射

室温(環境温度):25[deg]
自然対流(係数自動計算):チェック
環境輻射(表面の輻射率指定):チェック

輻射率:0.8※1

25c/Face(モデル2、モデル3)

温度

25[deg]

外部境界条件(モデル2、モデル3)

断熱

Theta_jc/Vertex(モデル2)

測定端子

Theta_jb/Vertex(モデル3)

測定端子

 

※1 プリント配線板の値を使用 国峰尚樹著「 エレクトロニクスのための熱設計完全入門」p37

解析結果

モデル1のテーブル出力[ジャンクション熱抵抗]の結果を示します。

 

 

これより、

ジャンクション-環境間熱抵抗θa = 12.312 [deg/W]

熱パラメータΨjt = 0.387 [deg/W]

熱パラメータΨjb = 6.916 [deg/W]

となることが確認できます。

 

モデル2のテーブル出力[ジャンクション熱抵抗]の結果を示します。

 

 

これより、

ジャンクション-パッケージ表面間熱抵抗θjc = 4.892 [deg/W]

となることが確認できます。

 

モデル3のテーブル出力[ジャンクション熱抵抗]の結果を示します。

 

 

これより、

ジャンクション-基板間熱抵抗θjb = 7.258 [deg/W]

となることが確認できます。

 

まずはFemtetを試してみたい

試用版はこちら

もっとFemtetについて詳しく知りたい

イベント・セミナー情報はこちら